Foomii(フーミー)

X(ツイッター)では言えない本音

鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

#115 リベラルも堂々と「愛国者」を名乗るべきだ ~「帰化人」、そして「マスク」「ワクチン」~

「国(日本)を愛する」という時、その「国」とは何を指しているのか。生まれ育った「祖国」なのか、伝統や文化に基づく「日本らしさ」なのか、それとも忠誠を尽くすべき「政府」や「国家」なのか。

 

少なくとも先祖代々日本人である私は、日本に生まれてよかったと心から思っている。日本の伝統を大切に思っているし、食べ物やお笑いなど日本の文化も大好きだ。野球やサッカーの日本代表チームが勝てば嬉しい。メジャーリーグでの大谷翔平選手の活躍や、日本人研究者のノーベル賞受賞は同胞として誇らしい。私は全体主義が嫌いな、真の意味での「リベラリスト(自由主義者)」を自認しているが、自分の内側に自然な発露としての「愛国心」があることを否定できない。そもそも国を愛する心は、保守主義者の専売特許ではない。

 

しかし、日本の政府や国家に盲従するつもりはない。それは、たとえリベラル政党が政権を獲ったとしても同じだ。権力を握った者は必ず腐敗し、恣(ほしいまま)にさせておくと暴走する。それを監視するのが主権者たる国民の役割であると心得ている。憲法によって権力を制約するのが「立憲主義」の本質だ。自民党の改憲案や参政党の創憲案は、権力にとって目障りな立憲主義を捨て去ろうとするものだ。そのことを、どれだけの人が理解しているだろうか。

 

政府や国家に忠誠を尽くさない私のことを、「国を愛していない」と非難する人がいるかもしれない。しかし「国を愛する」という時の「国」が何を意味するかは、人によってもその時々によっても違う。愛国心を問うのならば、その違いをはっきりと意識して議論するべきではないか──ところで、なぜ急にそんなことを書きたくなったのかというと、たびたび取り上げて恐縮だが、話題の「筋肉弁護士」こと桜井ヤスノリ氏が出演したYouTubeのライブ配信番組「NoBorder News」を見たからだ(あすに迫った日米首脳会談!6年ぶり来日の目的そして⋯トランプ大統領の思惑は⋯ 徹底議論!!【NoBorder NEWS #008】2025年10月27日 https://www.youtube.com/watch?v=YLA6g6lam_4&t=39s)。

 

このライブ配信に先立つ1週間前、桜井氏は移民問題をテーマにしたYouTubeの討論番組「NoBorder」(国が日本人を見捨てた?移民ばかり優遇する本当の理由【NoBorder#17】https://www.youtube.com/watch?v=gmQM7pweY50&t=2728s)に出演。「日本に住んでいるすべての外国人の子どもを守りに来た」などと発言して、不法移民の追放や外国人優遇反対を掲げる河合ゆうすけ氏(埼玉県戸田市議会議員)と激しく対立した。その後、桜井氏に反発する何者かがXで、彼が在日外国人(朝鮮系の名字と思われるが国籍は不明)であったことを暴露。桜井氏もNoBorder NEWSで、「帰化をして日本人になった」ことを認めた。

 

桜井氏の主張が気に入らないからといって、彼の出自を勝手に暴露した人がいたことを、日本人として恥ずかしく思う。ダイレクトに質問をぶつけて本人がみずから明かしたのならまだしも、議論とは無関係の家族のプライベートまで晒してしまうことになった。「官報で公表されているのだから、帰化人であることを暴露して何が悪い」と言われるかもしれないが、日本人の中にも部落差別や身分差別に苦しんできた人たちがいる。そうした出自を問わないことで、我々は「差別」を乗り越えてきたのだ。

 

それに帰化人だからといって「反日」であるとは限らない。それはまさに、番組に出演していた帰化人であるナザレンコ・アンドリー氏やフィフィ氏が証明している。中国系、韓国系の帰化人であったとしても、それは変わらない。親日で有名な言論人として、石平氏(中国出身)、金美齢氏(台湾出身)、呉善花氏(韓国出身)などの名をすぐに挙げることができる。中国系韓国系の帰化人を「反日」だと決めつけるのは「偏見」であり、それこそが「差別」なのだ。出自ではなく、あくまでその人の思想および言動を問うべきだ。

 

桜井氏の出自が誹謗中傷の対象となったことを、私は気の毒だと思う。だが一方で、私は今回のNoBorder NEWSの内容にも不満を覚えた。なぜなら、桜井氏が炎上した本質は、彼が在日外国人だったことにあるわけではないからだ。桜井氏は過去にX(旧Twitter)で、「日本人ほどキモい生命は存在しない」「99%の日本人はクソキモいんだって」「日本人は宇宙に存在してはならなかった人外の化物」「何をどう取り繕おうと日本人は引くほどキモい」などと、日本人をディスる投稿を何度もしていた。それが「日本人ファースト」に共感する人たちの猛反発を受けたのだ。

 

番組ではこの投稿に触れながらも敢えて明示せず、桜井氏もはっきりと言及しなかった。No Borderは、地上波が取り上げないダブーにあえて挑戦することをモットーにしているはずだ。なのになぜ、肝心なところを誤魔化したのか。桜井氏の投稿を見れば、「反日だ」と捉えられても致し方ない。それに私も、この口汚なさを好ましくは思わない。Xでの口調の激しさは、桜井氏のお家芸的なところもあるが、弁護士には品位も求められる。せっかくいい事を言っていたとしても、こんな口汚ないディスりばかりしていたら、味方をしようにもできなくなる。

 

桜井氏のことだから「味方なんて要らない」と言われるかもしれない。だが、リベラリズムを標榜する若手言論人が少ない中で、それではもったいない。まっとうな言論人として世に出ていきたいのならば、炎上狙いと思われるような言葉遣いはやめにして、法律家として品位のある言論人を目指してほしい。老婆心ながら、私はそう思う。そして桜井氏は上記の投稿について、逃げずに弁明するべきだ。

 

繰り返しになるが、私は桜井氏が日本人全員を貶めるような投稿をしたことは逆差別的であり、本当によくなかったと思う。ただ、桜井氏がそう書きたかった気持ちも少しは理解できる。それは、この投稿がコロナ騒ぎに言及する文脈で書かれたものだからだ。コロナ騒ぎの期間中、ユニバーサルマスクやパーティションなど愚かな対策が政府によって推奨され、日本中で実施された。感染予防効果のエビデンスに乏しいことが再三指摘されていたにもかかわらず、多くの日本人がなんら疑問を持たずにこれに従った。それどころか、法的根拠がないにもかかわらず、多くの企業や施設がマスク着用を強要し、正義中毒に酔ったマスク警察が全国各地に出没した。

 

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