… … …(記事全文6,616文字)起業家の溝口勇児氏が主宰するYouTube番組「No Border」が面白い。地上波では放送できないタブーに切り込んで、深層を知る論客たちが本音で議論する。出演者は保守系の論客に偏っているが、対立するリベラル左派などのゲストも呼んで、真剣勝負させているところに好感が持てる。議論を通じてレベルの高い専門知や未知の領域の実態なども語られるので、とても学びが多い番組となっている。ぜひ多くの人に観てほしい。そして「ワクチン」をテーマとする回のときには、忘れずに私を呼んでいただきたい。
2025年10月11日(土)に配信された「報道されない“移民の実態”犯罪急増の裏で進む日本崩壊」【NoBorder#16】も、大変面白かった。なかでもとくに白熱したのが〝ジョーカー議員〟こと河合ゆうすけ氏(埼玉県戸田市市議会議員)と〝筋肉弁護士〟こと桜井ヤスノリ氏の、いわゆる「クルド人問題」をめぐるやり取りだ(https://www.youtube.com/watch?v=DkLNScAyAOM&t=2767s)。
「論点は2つある。1つはクルド人によるウソの難民申請。クルド人のほぼ全員がと言っていいでしょう。もう1つはウソの難民申請をしているクルド人が、もともと性質の悪い不良外国人ですから、刑事事件を起こす。川口の医療センターで暴動事件を起こしたり、女子中学生・高校生をレイプしたり」。そう主張する河合氏に対し、桜井氏が「2023年の入管法改正のときにクルド人が複数回難民申請しているという問題から、一気にクルド人叩きが出てきた」と河合氏を批判。
「なぜそんな外国人を擁護したいの」と問う奥野卓志氏(ごぼうの党代表)に対し、桜井氏が「私は河合さんのようなレイシスト(人種差別主義者)。これは人として最悪。河合さんは、クルド人は『もともと不良』とおっしゃいましたよね」と非難すると、河合氏は「人種差別なんてしてないよ。犯罪率が高いからです」と反論。この後、YouTubeに動画をあげた河合氏によれば、これ以上のケンカに近い応酬があったが、編集でかなりカットされていたそうだ。
上記の引用も一部切り取りなので、詳しくは動画を全編見てほしい。なお、統計的に見て移民や訪日外国人の増加によって日本の治安が悪化しているとは言い難いとの指摘もあり、「犯罪急増」と断言する今回のタイトルは、外国人に対する偏見を助長する不適切なものだと私は思う。出演者の発言が信頼に足るものであるかどうか、今後、番組として精査してから配信することも考えてほしい(「是川夕「外国人が増加すると治安が悪化するのか? 犯罪統計による検証」https://www.hitachi-zaidan.org/global-society-review/vol4/commentary/index.html)。
川口市のいわゆる「クルド人問題」については、立場や思想によって意見が分かれている。河合氏が主張する通り、国籍を持つトルコ国内でクルド人が迫害されているわけではないのに、制度を悪用して難民を装い、稼ぐことだけを目的に来日しているとしたら問題だ。実際にクルド人によるトラブルや暴力沙汰も起こっており、川口の治安が悪化したと感じている人もいるだろう。外国人とは意思疎通がしにくいだけに余計に不安を感じやすく、不法に滞在して住民とトラブルを起こすような外国人には出て行ってほしいと願う気持ちも理解できる。「多文化共生」という理念に縛られて、そうした人々のプリミティブな不安を掬えていないところに、今日のリベラル左派の低落の一因がある。
一方で、日本人がやりたがらない解体業など3K労働に従事し、あまり価値のない土地を借りてくれるなど経済的に恩恵を受けている住民もいるようだ。そうしたことを前向きにとらえ、クルド人との共生を目指そうとする住民がいるのも確かだ。遠ざけるよりも交流して相互理解を深めることで、犯罪やトラブルが減ることも期待できる。日本で生まれ育ったクルド人の子どもの中には、日本で夢を実現したいと思っている人たちもいる(朝日新聞「日本で生まれ育った子への在留特別許可 川口のクルド人家族にも」2024年3月16日 https://www.asahi.com/articles/ASS3H7JB2S3CUTNB017.html)。
不法移民だからといって、子どもと引き離して、親を国外退去させることが正しいのか、さらに言えば日本しか知らない子どもにまで、「トルコに帰れ」と言うことが人として正しい道なのか。事はそれほど単純ではない。そしてそれは、クルド人に限ったことではない。不法移民の子どもだからといってコミュニティーから排斥し、教育を受ける機会を奪ってしまったら、まともに就職することができず、大きくなって犯罪に手を染めるなど、かえって治安の悪化につながる恐れも出てくる。
河合氏や桜井氏に限らず、No BorderのようなYouTube番組ではスタジオを盛り上げるために、極端で強硬な意見を持つ論者を出演させがちだ。そのほうが問題に気づく人が増える利点は確かにある。しかし、現実社会はそれほど単純ではなく、そんなに簡単に答えを得られるものではない。それに極端で強硬な意見は熱狂的な支持を生むが、その裏には人々の不安を煽って政治的及びビジネス的利得を得ようとする思惑も絡みがちであることを知っておくべきだろう。我々はこうした点にも留意して、XやYouTubeの発信を受け止める必要がある。

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