… … …(記事全文5,461文字)厚生労働省の主導で進められている「地域医療構想」をご存じだろうか。複数の市町村で構成される二次医療圏ごとに、近い将来の人口構成に応じた必要病床数を機能別(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)に推計し、効率的な医療提供体制を構築する取り組みのことだ。日本は世界の中でも突出して病床数の多い国であり、それが不必要な社会的入院を増やす要因と指摘されてきた。地域医療構想によって病床数は徐々に減少してきており、実質的な「医療費削減策」の役割も担っている。
これを受け継いで、2027年度から「新たな地域医療構想」がスタートする計画となっている。団塊ジュニア世代が高齢者になるとともに、85歳以上の人口が1000万人を超え、大量の医療介護ニーズが生じる「2040年問題」を見据えたもので、ガイドライン作りを目指した議論もすでに始まっている。具体的には、新構想開始までに病床数を約11万(一般・療養5万6000床+精神5万3000床)削減する一方で、高齢者救急への対応強化、医療機関の機能整備、医療と介護の連携強化といった対応を行うことになっている(デロイトトーマツ リスクアドバイザリー合同会社執筆「『新たな地域医療構想』の論点と方向性」2024年11月 https://www.deloitte.com/jp/ja/Industries/life-sciences/analysis/chiikiiryokoso.html)。
立憲民主党、れいわ新選組、共産党などのリベラル左派政党は、国公立病院の統廃合や病床削減に反対している。それどころか、国公立病院の赤字解消や医療従事者の待遇改善のために、さらに血税を注ぎ込むよう要求している。だが、国民医療費は50兆円に届こうとしており、国民の負担感は限界に達している。医療者が強請(ねだ)るままカネを出し続けて、いいはずがない。それに、社会の医療化をこれ以上進めても、国民は健康にも幸せにもならない。リベラル左派だけでなくすべての政党は、新たな地域医療構想の意義をきちんと見直すべきだ。
この構想の方向性を、私も概ね支持する。ただ、物足りなさも感じている。なぜなら、国民の健康と幸福度の向上を目指すとともに、医療費を大幅に削減するという点で、まだまだできることがあるからだ。その肝となるのが「早期発見早期治療」のまやかしを解くこと、そしてキュア(治療)からケア(介護)へ大転換することだ。そこで、この連載の締めくくりとして、「10の医療政策」を考えてみた。これらを実行しようとすれば、医療界とくに日本医師会から大きな抵抗を受けるだろう。だが、本当に祖国を憂いているなら、政治家は強欲な医療界の言いなりになってはいけない。これ以上医療を肥大化させても、国民は幸せにならない。そのことを。政治家たちは肝に銘じるべきだ。
医療費を大幅に削減する【10の抜本的医療改革】
~「キュア(治療)」から「ケア(介護)」への大転換~
1.公的病院の統廃合を促進し、「高度医療ハイボリュームセンター」を整備する
病院の統廃合の話が出ると、住民から「我が町から病院がなくなる」と不安の声が上がり、地方議員がこぞって反対する。しかし、病院が多すぎると医師をはじめ医療従事者が分散し、労働環境の悪化を招く。さらに1病院あたりの患者数や手術数が減り、治療成績も低下する。
医療の質を高めるためにも、公的病院の統廃合が必要なことを政治家は理解し、住民を説得するべきだ。そして、医療圏ごとに必要数の「高度医療ハイボリュームセンター」を指定する。そこで救命救急(大ケガ、火傷、脳血管疾患、心臓血管疾患など)、周産期、がん、難病などの高度医療を一手に引き受け、それ以外の病院はこれらの治療から撤退させる。高度医療が必要な患者・家族が入院や通院をしやすいよう、地方では交通アクセスの整備なども合わせて行う。
2.「病人」を作り出す「定期健診」「がん検診」を廃止する
「早期発見・早期治療」は善だと思い込まれているが、定期健診やがん検診(以下、健診検診)には総死亡を低下させる十分なエビデンスはない。むしろ「病人」を作り出して「過剰診断」「過剰治療」を生み出す元凶となっている。そのことを医療者や政治家は学び、国民にも理解を求めるべきだ。そして、自治体や職場の健診検診に関係する法律を改正あるいは廃止し、公的サービスとしての健診検診は中止する。
どうしても健診検診を受けたい人は民間の人間ドックなどで、全額自費で行うようにする。なお、なんらかの症状や不安がある場合については、健康保険での受診や検査を妨げるものではない。しかし、なにも症状がないのに「保険病名」をつけて不必要な検査をする医療機関に対しては摘発を強化し、厳しく処罰する。
3.公的病院は命に関わる医療を優先し、予防的治療や日常的疾患の治療は行わない
公的医療病気の統廃合によって整備された高度医療ハイボリュームセンターは、救命救急、周産期、がん、難病など高度医療が必要な患者の治療に特化し、高血圧、脂質異常症、軽い高血糖などの「予防的治療」や、ありふれた感染症、軽い関節痛、軽い皮膚疾患など「日常的疾患(コモンディジーズ)」の治療は手放すようにする。予防的治療や日常的疾患の診療は地域医療を担う「家庭医」の役割とする(6を参照)。

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