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X(ツイッター)では言えない本音

鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

医学的に「正しい情報」など「ない」と断言する ~パンデミックに乗じた政府による「言論統制」を許すな~

パンデミックに乗じた政府の「言論統制」が、いよいよ本格的に強化されることになりそうだ。2024年4月24日、政府の「新型インフルエンザ等対策政府行動計画(案)」(以下、行動計画案)が公表された。国会での審議や決議もなく、6月の閣議で決定される見込みだという。現在、パブリックコメントを募集中だが、もし行動計画案がこのまま通れば、すでに恣意的な言論封殺が行われているYouTubeだけでなく、X(旧ツイッター)やニコニコ動画等においても、政府の感染症対策やワクチンに対する批判的な投稿が削除される恐れがある。

 

ブラウザの「ページ内の検索」機能を使って調べてみたところ、行動計画案には「偽・誤情報」というワードが、なんと15回も書かれていた。それほど強い意思を持って、政府は彼らの言う「偽・誤情報」と闘う決意だということだろう。それが書かれた一部分を抜き出すと、次のように書かれている。

 

「また、例えば、ワクチン接種や治療薬・治療法に関する科学的根拠が不確かな情報等、偽・誤情報の拡散状況等のモニタリングを行い、その状況等を踏まえつつ、その時点で得られた科学的知見等に基づく情報を繰り返し提供・共有する等、国民等が正しい情報を円滑に入手できるよう、適切に対処する。(統括庁、厚生労働省、関係省庁)

偏見・差別等や偽・誤情報への対策として、国は SNS 等のプラットフォーム事業者が行う取組に対して必要な要請・協力等を行う。(統括庁、総務省、 法務省、厚生労働省、関係省庁)」

 

これを読むと、政府は「偽・誤情報」を「科学的根拠が不確かな情報等」と定義していることがわかる。逆に言うと、「科学的根拠が確かな情報等」こそ、「正しい情報」だと言いたいのだ。そして、偽・誤情報が拡散されていないかをモニタリングする、つまり「監視」するとも明記している。

 

一方で、SNS等のプラットフォームの事業者に対しては、その「取組」に対して必要な要請・協力等を行う」と書いている。政府が言論の内容を恣意的に「正しい情報」「偽・誤情報」と定義して、通信事業者に要請・協力等という「働きかけ」を行うのだから、明らかに憲法21条(表現の自由と検閲の禁止)に違反していると私は思う。だが、彼らは、「政府」ではなく、あくまで「事業者」が「取組の主体である」とすることで、「憲法違反ではない」とかわすつもりなのだろう。非常に姑息な文章だ。

 

いずれにせよ、ワクチン接種や治療薬・治療法について、どれが「正しい情報」でどれが「偽・誤情報」だと、誰が決めるのか。政府、医学医療界、ワクチンメーカーにとって不都合な情報を「偽・誤情報」と決めつけて、言論封殺を試みるに決まっている。それに、そもそもの話として、ワクチン接種や治療薬・治療法について、科学的に「正しい情報」などあるだろうか。私は敢えて「ない」と断言したい。科学的な「エビデンス(証拠)」なるものの成り立ちからして、「正しい情報」などあり得ないのだ。そのことを、ここではっきりさせておきたいと思う。

 

ワクチン接種や治療薬・治療法に関する科学的なエビデンスは、基本的に臨床試験(生きているヒトを対象とした実験)によって得られている。なかでも「ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial=RCT」が、最も信頼性の高い方法とされている。被験者の集団をランダム(無作為)に2群に分け、一方の群に有効性と安全性を検証する実薬を、他方に比較対照とする偽薬(プラセボ)あるいは従来薬を投与する方法だ。RCTで偽薬あるいは従来薬より副作用の発生率や病気の発症率、死亡率が低いという結果が出て、はじめて安全で有効だと言うことができる。

 

なぜRCTが最も信頼できるのかというと、ランダムに分ければ理論的に実薬群と対照群の属性(性別、年齢、健康状態、職業、年収等々)が均一になることが分かっているからだ。それによって、両者の結果を偏りなくフェアに比較することができる。誰に実薬・偽薬が投与されたのか、研究者にも被験者にも分からないようにする「二重盲検法(Double Blind Test)」を採り入れたRCTを行えば、さらに結果の信頼性が増す。研究者が都合のいい被験者に実薬を投与するような恣意性を排除できるからだ。さらに、同じようなデザインのRCTを様々な研究主体が行って、そのデータを統合し解析する「メタアナリシス」あるいは「システマティックレビュー」を行えば、より信頼性の強固なエビデンスを得ることができる。

 

だが、医学における科学的な「エビデンス」のすべてが、RCTやシステマティックレビューのような、フェアで信頼性の置ける方法で得られているわけではない。製薬業界や医学医療界の利権が関わる臨床研究では、「不正」まがいの「アンフェア」なやり方でエビデンスが作られてきた歴史がある。たとえば、次のようなことが行われてきた。

 

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