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小川榮太郎「批評家の手帖から」

小川榮太郎(文藝評論家)

小川榮太郎

雑誌『湊合』は私の祈願である。
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今、私は平和研の機関誌湊合に人生のすべてを投入している。

なんというか、途方もない精神的な空洞の中、手応えというもののまるで見えない現代日本で、言葉と政治とをわしづかみにしながら、日本を再び日本に戻したい、日本人を再び日本人に戻したいという祈願が、殆ど生きることに気息奄々たる私をどうにかこうにか、突き動かしている。

『作家の値打ち』を書いた時、私は多くの作家らが、平成前半まではそれぞれに――その多くは私の美意識や価値観とは程遠いにせよ――質の高い仕事、才能がなければでき得ない仕事をしていたのに、平成後半から、わずかな例外を除き、自分の前半生を裏切るような途方もない駄作ばかりを量産している事に、驚き、呆れた。元々書けていたのだ。それが皆が揃って駄作ばかり書くというのはどういう了見だろう。

自分の仕事への熱狂が彼らにはなかった。仕事の質への気ちがいじみた情熱が彼らにはなかった。才能も技量もあったが、彼らには表現者、いや人間としての一番大切な資格―ー私は敢えて資格という言葉に激烈な感情をこめて今これを使う――が決定的に欠けていた。

人間として生きる以上、人生を舐めてはならない、その基本がこの人達にはないという事だ。

人生を文壇政治に置き換え、人生を受賞歴に置き換え、お互いに手抜き仕事をしながら生き延びてゆく。1頁読むだけで唾棄すべき作品に対して、お互いが選考委員になって、谷崎賞だの三島賞だの読売文学賞だの毎日出版文化賞だのその他諸々の、昔はなかった賞を与えあっている。Wikipediaで調べてみると、皆さん、受賞の山、山、山、10も20もの賞をとっている。三島や川端が生涯とった文学賞は3,4を出ない。それはそうだろう。顕彰は最も高い価値にしか与えないから意味を生じる。まさか今の作家が、三島や川端よりも倍も三倍も値打ちのある仕事をしていると思っている者は、当人も含め、日本中に一人もいまい。


これを生き恥をさらすという。

それが今の文壇だとして、問題は、画壇もそう、学界もそう、言論界もそう、財界もそう、あらゆる分野で、日本人が人生を舐めているという事にある。生き恥をさらしているという他のない人間ばかりが各界中枢を占めているという事にある。

私はその腐臭の中で、日々、生き続ける事の困難を覚えながら、それに耐え、仕事を重ねている。

湊合は、私の祈願である。中枢が腐った日本を再生するにはどういう道があるのか。国も文明も滅びる時は早い。戦後の左翼教育、反日教育、人権至上主義、拝金主義が、人間をかつてなく腐らせたとして、彼らは昭和10年生れ前後から後で、丁度私の親の世代だ。

つまり腐敗を生む価値観と教育的な構造、その人達が作り出した社会全体が今三世代を閲している。これは文明が破滅するのに十分すぎる時間だろう。平成前期まで作家らの仕事が良質だったのは、その頃まで怖い先輩たちが生き残っていたからだ。小林秀雄、井伏鱒二、永井龍男、石川淳、松本清張、司馬遼太郎、池波正太郎らが存命の時、この仕事の質に命を懸け続けた表現者らの前で、ふざけた仕事ができるわけがない。この世代が舞台から消えた後、突如、すべてが壊れ始めた。どの分野でも同じ現象が生じた。

それが基準になって、今の日本がある。こうした腐敗は政治の腐敗と違い、修復が難しい。人間性の基準というのは、それ自体が共同体の合意であって、皆が恥知らずになれば、恥の観念も変る。

今、湊合における私の仕事が、昭和、明治を振り返る歴史、文藝のみならず、お門違いの人間学にまで及ばざるを得なかったのはその為である。それと同時に、人間の生きる意味はインターネット、人工頭脳の出現で大きく変化しつつある。人類論―近代の超克ーを書き始めたのは、この問題が同時に我が国を襲っている為だ。

これらの仕事は、いずれ単行本に纏めてゆくが、同時に政治家に政策として提出し、国の施策として採用してもらわねば、所詮評論家個人の意見表明で終る。私は世論の力を信じていない。それは碌でもない働きしかしない。社会運動も信じていない。社会運動のエネルギーは破壊か反抗としてしか機能しない。

例えば、幕末、社会運動としての攘夷が幕府を破壊した。だが維新の建設は社会運動ではなされていない。ごく数人の建設者――大久保、木戸、渋沢、大隈、伊藤など―がこれを成し遂げた。私は建設者でなければならない。私が安倍氏、菅氏、岸田氏を始め有力な政治家と密接なパイプを維持、構築してきたのは、政策実現によって私の思想を形にする天命があるからだと信じている。

熱狂的な協力者がほしい。私がかつて失脚中の安倍晋三に熱狂的に身を捧げ、今、無名の偉大なピアニスト管谷怜子に熱狂的に身を捧げているように、私の天命の成就には熱狂的な協力者がいる。私自身は、ただひたすら湊合の原稿を伊豆の一人の暮しで書き続けて、それを待っている。

湊合の申込リンクを張っておく。一度お手に取っていただきたい。

◇申し込み先リンク:https://ws.formzu.net/fgen/S805497904/

頒布価格:5,000円/冊 

     ※『湊合』を初めて注文する方は3,000円

ws.formzu.net





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