… … …(記事全文3,910文字)◆日本進出は「トヨタとアップルのため」
今年2月24日、半導体受託製造(ファウンドリー)分野で世界最大手の「台湾積体電路製造(TSMC)」と子会社の「日本先端半導体製造株式会社(JASM)」が熊本県、菊陽町に建設した第一工場の開所式が行われました。台湾からはTSMCの会長、劉徳音(マーク・リュウ)氏、CEOの魏哲家(シー・シー・ウェイ)氏、創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏が参列しました。日本側は甘利明元経産大臣、斎藤健経産大臣、熊本県知事の蒲島郁夫氏らが出席したほか、ソニーグループ会長兼CEOの吉田憲一郎氏、デンソー 社長の林新之助氏、トヨタ自動車会長の豊田章夫氏ら、JASMに出資する企業の代表者が顔をそろえました。
日本政府は第一工場に最大4,760億円の補助金を出すことを決めています。JASMの株はTSMC(86.5%)、ソニー(6.0%)、デンソー(5.5%)、トヨタ(2%)が持ち合います。張忠謀氏は93歳ですがお元気で、「日本と世界に対して半導体供給網(サプライチェーン)を強靭化する。今日が日本の半導体製造にとってのルネサンスになることを期待している」と述べました。日本に進出する理由について魏哲家氏は「重要な顧客企業のため」と言っています。日本政府に請われたからではなく、補助金が得られたからでもない、と明言しています。
魏氏のいう重要な顧客とは、一つはトヨタ自動車です。魏氏は開所式で豊田会長と会った際、「(熊本工場は)TSMCが日本で半導体製造に乗り出す第一歩。ぜひトヨタの支援をいただきたい。」「(自動車向け半導体が)今はTSMCにおいて小さな割合であっても、将来は伸びる。トヨタと一緒に成長したい」と語っています。もう一つの重要な顧客はアップルです。iPhoneはカメラ用の撮像素子(CMOSセンサー)を大量に消費しますが、それを供給しているのはソニーグループです。第一工場が稼働すればソニーのCMOSセンサーの生産能力が上がり、結果としてアップルに貢献することになります。