… … …(記事全文4,370文字)◆水田稲作はメタンガスの発生源⁉
今年1月15日からスイス・ダボスで開かれた「世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)」ではメインの議題としてはロシア・ウクライナ紛争の休戦が話しあわれましたが新型コロナウィルス、気候変動、環境規制などもテーマとして取り上げられました。毎年、開かれているこの会議には世界中の億万長者と有力者たちが招待されます。世界の事実上のリーダーである彼らがその年の諸問題を話しあい、解決策を模索する、といえば聞こえはいいのですが、要は自分たちのビジネスをいかに拡大するか、という戦略を密室のなかで練っているのです。ヨーロッパでは現在、地球温暖化対策と伝統的な農業を守ろうとする人たちとのせめぎあいが起きていて、社会がまっぷたつに分断されています。かつては環境保全の役割を担っていた農業が今はまるで環境破壊の元凶のように言われています。
ダボス会議で製薬大手「バイエル社」のCEOは「アジアのほとんどの地域では、いまだに水田に水を張る稲作が行われている。水田稲作は温室効果ガス、メタンの発生源だ。メタンはCO2の何倍も有害だ」「農業や漁業は『エコサイド(生態系や環境を破壊する罪)』とみなすべきだ」という、とんでもない発言をしました。田んぼに水を張ることが生態系の多様性を守り、環境を守ることにつながるというのに。「バイエル社」は、遺伝子組み換え作物(GM作物)を開発した、悪名高い「モンサント社」を吸収合併した会社です。
世界の種子市場でシェア一位を誇っていたアメリカのモンサント社は硫酸などの化学薬品の製造から始まり、農薬メーカーとして成長しました。ベトナム戦争の時には有名な枯葉剤を開発し、その後、農業バイオテクノロジー分野に進出しました。バイエル社は今、種まきから肥料の散布、収穫までの全過程をリアルタイムで監視できるアプリを農民に販売しています。このアプリを売るメリットは、農業に関するさまざまなデータをバイエル社が独占し、一括管理できることです。