… … …(記事全文4,789文字)◆輸入が止まれば日本は食料危機になる
「農業の憲法」といわれる「食料・農業・農村基本法」が4月19日に衆議院で自民・公明両党と維新の賛成によって通過し、26日から参議院での審議が始まりました。25年ぶりの改正となりますが、中身を見ると改正どころか改悪としか思えません。日本の食料自給率はカロリーベースで38%と、先進国最低水準であることはよく知られていますが、改正案では「食料自給率」という言葉自体が消されかけています。それでもまったく言及しないわけにもいかないのか、「食料自給率以外にも食料安全保障に関する目標を設定する」という意味不明な文章になっています。官僚の作文は「言語明瞭、意味不明」といわれますが、実に「迷文」です。これまでの農政が失敗続きだったことを認めたくない農水官僚が、国民の目を自給率向上からそらせようとしているようです。
ロシアのウクライナ侵攻以来、「世界の穀倉」ウクライナは輸出ができなくなりました。小麦や原油、化学肥料の原料価格が高騰し、化学肥料の原料を輸入に頼る日本の農家は苦しんでいます(リンとカリウムは100%、尿素は96%が輸入に依存)。これまで最大の量を輸入していた中国は、内需が増えて肥料を売らないといい始めました。カリウムの輸入元であるロシアやベラルーシは、日本にとっては今や敵国になりました。中国は有事にそなえて国民が一年半、食べられるだけの食料を備蓄していますが、日本の備蓄は米を中心に2カ月程度しかありません。輸入が止まったらスーパーの棚は空っぽになることが明らかなのに、政治家にも農水省にも財務省にも危機感がありません。