… … …(記事全文4,525文字)◆裁判の争点は「職務権限の有無」
去年8月17日、東京五輪のスポンサー選定で賄賂を受けとった容疑で東京地検特捜部に逮捕され、9月に起訴された「大会組織委員会」元理事の高橋治之被告が保釈後、初めて取材に応じ、事件について語りました(『週刊文春』2月15日号)。高橋被告は五輪スポンサーの「AOKIホールディングス」や「ADKホールディングス」などから計1億9,800万円を受けとったとして受託収賄罪で起訴されました。「AOKIホールディングス」の青木拡憲元会長や「ADKホールディングス」の植野伸一元社長ら、贈賄側は罪を認めて有罪が確定しています。しかし高橋氏は「受けとったのはあくまで民間のコンサルタント業者としての報酬であって賄賂ではない」と一貫して無実を主張しています。
高橋氏は大手広告代理店「電通」の元専務で、幅広い人脈を持っていました。五輪のスポンサー選定は事実上、電通から約100人が出向していた大会組織委員会のマーケティング局が担っていました。高橋氏は民間人ではありますが大会組織委員会の元理事なので公務員とみなされます。公務員が職務に関し賄賂を受けとったり、要求したりすると「収賄罪」に問われるし、一定の職務行為を依頼する「請託」を受けた場合は受託収賄罪が成立します。裁判の争点は高橋氏の「職務権限の有無」です。高橋氏にスポンサー選定の職務権限がなければ受託収賄罪にはなりません。
高橋被告には「マーケティング担当理事として」スポンサー集めの職務権限があったと検察が主張する根拠は、大会組織委員会の元会長だった森喜朗氏の供述です。森氏は検察に、高橋氏について「スポンサー集めなどのマーケティングを担当してもらっていた」と説明しています。しかし高橋氏は「それは森さんが勝手に言っているだけ。森さんを証人尋問に呼んでほしい」と訴えています。