… … …(記事全文7,393文字)大阪に住んでいると、嫌でも耳に入ってくる言葉がある。「大阪都構想」である。もっとも、都構想は大阪維新の会が使う政治的な用語であり、大阪府と大阪市の行政が公認するものではない。大都市法の改正や大阪府の名称変更に関する特別法でもできないかぎり、住民投票で賛成多数になったとしても、たちまち「大阪都」に変わるわけではない。その本質を正確に言えば、私が何度も書いているように「大阪市廃止・特別区設置構想」がふさわしい。ただ便宜上、ここでは「いわゆる都構想」「都構想」と表現することにする。
その都構想の賛否を問う住民投票は2015年5月と2020年11月の2度にわたり否決され、もう終わった出来事のはずだった。ところが、ここに来て、まるでゾンビのように、いや、維新の会にとっては「執念の再挑戦」として、再びわたしたちの前に現れようとしている。「またあの議論が始まるのか」と嫌な気分にさせられる。
大阪では、早ければ来春にも3度目の住民投票が実施されるかもしれない。有権者が問われる賛否の対象は、政令市・大阪市の廃止と特別区の設置について。過去2度も大阪市民から「NO」を突きつけられたのに、2月8日投開票の大阪ダブル選で維新は「大阪の成長のためには不可欠」と主張し、性懲りもなく3度目の挑戦に向けて準備を進めている。
ところが、過去2度の住民投票と異なり、今回は違った政治的な風景が広がっている。国民民主党が、いわゆる都構想の対案として特別市制度を掲げているのだ。同制度は大阪市を残しつつ、権限と財源を強化することで府と市の二重行政を解消しようという考え方だ。
過去の住民投票においては、都構想の反対派である自民党や共産党などが「大阪市をつぶし、市民サービスなどを削る都構想はいらない」などと主張してきた。維新から対案を求められると、「大阪市を残すことが対案だ」と訴えてきた。だが、今回は少々違う。国民民主は新制度を都構想の対案に据え、維新と真っ向から対立しようとしている。この点が過去との最大の差である。
もっとも、一般の有権者からすれば、両者の違いはどうにもわかりにくい。制度の名称も何となく似ているし、どちらも「大阪の成長」「行政の効率化」を掲げている。もちろん両者の制度はまったく別物で、むしろ方向性としては正反対と言っていい。このままでは有権者は混乱した状態で住民投票を迎えねばならず、だとしたら正常な判断が下されるかも怪しくなってくる。
そこで提案したいのが討論会の実施である。大阪維新と国民民主が正面から討論し、互いの制度のメリット・デメリットを明確に示すのだ。大阪の未来を左右する制度選択なのだから、政党間の言いっぱなしだけは御免こうむりたい。可能ならば、公開の場での丁寧な議論が望ましい。
とは言え、懸念材料がないわけではない。国民民主はともかく、維新が尻込みする可能性があるのだ。おそらく法定協議会は早ければ6月中には設置され、大阪府・市の両議会から代表で選ばれた委員が討議に参加する予定だ。だが、維新代表の吉村洋文大阪府知事が強固に求めるように、来年4月の統一地方選と同時に住民投票が実施されるとして、法定協での議論は1年もない。仮に国民民主から討論会への参加が求められても、都構想の制度設計が"生煮え"であることを理由に断る可能性が高い。

購読するとすべてのコメントが読み放題!
購読申込はこちら
購読中の方は、こちらからログイン