Foomii(フーミー)

誰も説明しない世界と日本の現実

山岡鉄秀(情報戦略アナリスト)

山岡鉄秀

MAGA崩壊は日本の有事 ―日本で報じられていない内部亀裂の実態

「分裂」の解像度を上げる

MAGAの分裂が語られて久しい。だが「トランプ支持が崩れ始めた」という漠とした印象と、現実に進んでいる事態とのあいだには、相当な隔たりがある。まずはそこを丁寧に腑分けするところから始めたい。

結論を先に言えば、いま起きているのは支持基盤の「崩壊」ではない。熱心なMAGAのコアは、依然として九割前後の支持率を保ち、岩盤として残っている。揺らいでいるのはその外側だ。かつてMAGAの看板を掲げていた準支持層と、トランプを消極的に支えてきた非MAGAの共和党員。この外周が、静かに剥がれ始めている。

構図はこう捉えるとわかりやすい。中心に熱心なコア、その周りに準MAGA層、さらに外側に非MAGA共和党員、そして無党派層。いま剥離しているのは外へ行くほど強く、中心は固いままだ。つまり「MAGA対反MAGA」という単純な二項対立ではない。しかし、先鋭化と総数の減少が同時進行していることは事実である。


MAGAの減少:三つの力――下から、横から、上から

では、その亀裂はどこから、いつ、どう走ったのか。三つの力が、別々の層を、別々の時間軸で削っている。

第一の力は、下から基盤を侵す経済である。インフレ、関税、そしてガソリン高。トランプの共和党内支持は、一月の八割超から春にかけて数ポイントずつ、しかし着実に削られてきた。ガソリン対応にいたっては純支持率がマイナス六二という惨状で、五月には全体支持率が二期を通じて最低の三八%まで沈んだ。大衆レベルの離反を招いている主犯は、この経済である。まずここを土台に置かねばならない。

第二の力は、横から言論空間を裂いたイラン戦争だ。二〇二六年二月末に始まったこの戦争は、MAGAの言論人たちを真っ二つにした。タッカー・カールソン、メーガン・ケリー、キャンディス・オーウェンズらが公然と大統領批判に回り、ジョー・ローガンら大物ポッドキャスターもイスラエルとの密着に苛立ちを募らせた。数字にも表れている。イラン戦争を支持したMAGA共和党員は八三%に上るのに対し、非MAGA共和党員では四三%どまり。ここでも党内は割れた。

そして第三の力が、上から党の中枢を裂いた人事の混乱――国家情報長官(DNI)後継をめぐるドタバタである。これは二〇二六年六月の、ごく最近の出来事だ。日本ではほとんど報じられていないが、MAGAの亀裂が現職の共和党上院議員という党中枢にまで達したことを示す、最も信頼度の高い証拠がここにある。順を追って解説したい。


ギャバード退場と、パルテという難問

発端は、DNIを務めていたトゥルシー・ギャバードの辞任だった。元民主党下院議員から保守に転じた異色の人物で、在任中はCIAとの確執や機密の党派的な選別開示で物議を醸してきた。そのギャバードが二〇二六年五月、夫のがん闘病を理由に職を退く。本来なら、後任は粛々と決まるはずだった。DNIが空席になったときの段取りは、法律で明確に定められているからだ。

ところが六月二日、トランプがソーシャルメディアへの投稿で指名した後任が、ワシントンを凍りつかせた。連邦住宅金融庁(FHFA)長官のビル・パルテである。

ここで、日本の読者のためにFHFAという役所を説明しておきたい。これはサブプライムローンの後始末として生まれた組織だ。二〇〇八年のリーマン危機――まさにサブプライム破綻――で経営が傾いた住宅金融の二大公社、ファニーメイとフレディマックを政府管理下に置くため、その年に新設されたのがFHFAである。この二社は、銀行の住宅ローンを買い取り、証券化して投資家に売ることで市場に資金を回す、米国住宅金融の心臓部だ。米国の住宅ローンの過半がこの二社を通る。FHFA長官は、その二社を監督する規制当局であると同時に、破綻以来続く政府管理の管財人として、事実上二社を経営する立場にある。要するにパルテは、一介の規制官ではなく、米国住宅金融の根幹を握る巨大な権限の持ち主なのだ。

その男をDNIに、である。何が異常なのか。第一に、

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