… … …(記事全文6,152文字)中国は何をやったのか
7月6日正午過ぎ、中国海軍の戦略原子力潜水艦が、太平洋に向けて潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を撃った。模擬弾頭付きである。中国海軍の発表はいつも通り木で鼻をくくったようなものだった。曰く、年次訓練の一環である。関係国には事前通報した。国際法と国際慣行に合致している。特定の国を標的としたものではない。
では聞くが、発射海域はどこか。ミサイルの型式は何か。どこを飛んだのか。中国は一切明らかにしていない。「透明性」を自称しながら、肝心なことは何一つ言わない。いつもの手口である。
空白を埋めたのは外部の分析だ。日本政府関係者は、発射地点を南シナ海・海南島の東側海域と見ている。台湾の国家安全会議の呉釗燮秘書長は、ミサイルをJL-2(巨浪2)と特定し、南シナ海から発射されてフィリピン・ルソン島北部の上空を越え、南太平洋に着弾したとする飛翔経路図を公表した。オープンソース分析では、航行警報から約7,300キロの飛翔経路が割り出され、着弾点はツバル・キリバス周辺海域と推定されている。米戦略国際問題研究所(CSIS)の分析もこれと一致する。南シナ海から撃ち、ルソン島の頭上を越え、南太平洋のど真ん中に落とした。これが実像である。
しかもこの着弾海域、ラロトンガ条約が定める南太平洋非核地帯の内側だ。中国は同条約の議定書に署名している。署名した条約の対象海域に、核搭載可能な戦略ミサイルを撃ち込む。UNCLOSに署名しながら南シナ海の仲裁判断を「紙屑」と言い放った、あの中国である。今更驚くには当たらないが、ニュージーランドのピーターズ外相が「通報からわずか数時間で発射された」と怒りを露わにしたのは当然だろう。
ミサイルがJL-2なのかJL-3なのかは、いまだに決着がついていない。台湾はJL-2説、中国の軍事評論家たちはJL-3説。面白いのは、人民解放軍が公表した写真にJL-2とJL-3の両方が写り込んでいたことだ。CSISは「両者は段数も形状も同じで、公表された洋上写真には寸法の基準になるものが何もなく、特定は不可能」と匙を投げた。偶然だと思うだろうか。私は思わない。どちらか分からない状態を意図的に作り、相手の脅威認識を最大化する。曖昧さそのものを武器にする。これが中国のやり方である。
発射されなかった「もう一発」
さて、ここからが本題だ。日本のメディアがほとんど報じていない、しかし日本人が最も知らねばならない事実がある。

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