… … …(記事全文3,108文字)【3行まとめ】
• トランプ氏の対中姿勢は「弱腰」ではなく、ベネズエラ侵攻を優先した冷徹な戦略的計算による「東半球のカード化」です 。
• 欧州はキリスト教という「根本規範」を喪失し、言論弾圧と司法の二重基準によって内側から自壊しています 。
• 米国が国際法を自ら破壊したことで、中国が同様の論法で台湾侵攻を正当化する道を開きました。日本は「二重の孤立」を直視すべきです。
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1 トランプの「沈黙」が意味した冷徹な計算
今回の原稿を書くにあたり、改めて状況を整理する必要があります。当初、高市首相を擁護せず、中国による台湾包囲演習についても「心配ない」と答えたトランプ氏の姿を見て、私は「対中及び腰」ではないかとの懸念を抱きました 。しかし、その後のベネズエラへの電撃的な武力侵攻と油田奪取という現実を見れば、その評価は一変します 。
トランプ氏は、自国の「庭」である西半球での軍事行動を前に、あえて台湾問題で中国を刺激し、二正面で批判を浴びることを避けたのでしょう 。この「戦略的沈黙」の裏で、彼はベネズエラ侵攻という実力行使によって、中国に対し「資源と力の支配」という強烈なメッセージを突きつけました 。
ここで我々が直視すべきは、米国が西半球で中国を叩いたのは、あくまで自国の死活的利益を守るためであって、東半球の日本や台湾を守るためのパンチではないという冷酷な事実です。彼は「西半球の掃除」を完遂するために、東半球の現状を中国への「譲歩の材料」として差し出した可能性があります。世界は「ルール」という幻想が剥がれ、力だけが物を言う「戦略的リアリズム」の時代に完全に回帰したのです 。
2 米国の論法をコピーする中国 ── 国際法の「死」
今回のベネズエラ侵攻で米国が用いた論法は、日本にとって極めて危険な先例となります。米国は、ベネズエラを「国際テロ組織」に指定し、国内法を国際法より優位に置くことで、国連の枠組みを無視して武力侵攻を強行しました 。
このロジックは、そのまま中国に利用されるリスクを孕んでいます。中国が「台湾の分離独立派はテロ組織である」と定義し、自国の「反国家分裂法」に基づき武力侵攻を強行したとき、国際法という防波堤を自ら壊した米国に、それを批判する言葉の力はありません。米国が示した「国内法こそが正義」という新世界のルールを、中国は今、最も忠実にコピーしようとしているのです。もはや国際法違反という批判は、何の抑止力も持ち得ません。唯一、マデュロ政権の悪政が凄まじかったので、今回の侵攻にベネズエラ国民が歓喜しているという事実の違いがありますが。
3 「根本規範」の崩壊と欧州の自滅
米国が西半球への回帰を露骨にする中で、かつての同盟国である欧州は内側から崩壊を始めています。かつて、不世出の碩学・小室直樹氏は、

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