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保守とはなんぞや。
一般に言われているのは、伝統を大切にするなど、古くて良いものを尊重するが、かと言って古いものに固執するわけではなく、新しくて良いものはどんどん取り入れていく、という姿勢だろう。
これが動物行動学や進化生物学、進化心理学の分野からのアプローチによると、どうしてもパラサイト(バクテリア、ウィルス、寄生虫などの寄生者)という観点を抜きにしては語れないことになる。
なぜパラサイトかといえば、生物が生きるか死ぬかに最も関わるのがパラサイトだから。
生物の歴史はパラサイトとの戦いの歴史と言ってもよいからだ。
パラサイトに対する抵抗力、つまり免疫力はまずは生物がよく生き延びるために必須だが、相手選びのときにも最も重要視する。
相手との間にできた子をよく生き延びさせるためだ。
そのパラサイトの蔓延度、つまりパラサイト・ストレスには地域によって大きな違いがある。
高温多湿のところでは概ねパラサイト・ストレスは大きく、低温で乾燥しているところでは小さい。
そこでパラサイト・ストレスと伝統主義との間の関連を調べるという試みがなされた。
パラサイト・ストレスが大きい国では伝統主義が強いのではないかと推測したからだ。
伝統主義とは宗教や文化を重んじることであるが、生活習慣や食べられる物と食べられない物の区別、食べ物の調理法なども古くからある方法を重んじるという意味だろう。
つまり、古くからある、こうすれば大丈夫という方法に従っていれば、伝染病に感染するとか、毒のある食べ物や食あたりすることが避けられやすいという結果となる。
2016年にオランダ、アムステルダム大学のJ・M・Tyburらが行い、PNAS(米科学アカデミー紀要)に発表した研究によれば、 間違いなくパラサイト・ストレスと伝統主義の間には正の相関があった。
パラサイト・ストレスが大きいと伝統主義も強いのである。
とすればこれは、パラサイト・ストレスと保守主義との間に相関があると予想してもいいかもしれない。
ちなみにパラサイト・ストレスが最も大きい国は、中国、インド、ブラジル。
パラサイト・ストレスが0の国もあって、カナダである。
日本はパラサイト・ストレスは比較的大きいが先にあげた3国ほどではない。
ともかくそうすると、新型コロナという伝染病が世界的に流行したとき、つまりパラサイト・ストレスがどの国でも高まったとき、人々は伝統主義に救いを求め、結果として伝統を重んじる保守思想に傾いたのではないだろうか?
あるいは保守の人ほど新型コロナを恐れるとか関心を持ったのではないのか?
そのようなことをこの分野の多くの人々が思い付いた。
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