… … …(記事全文3,096文字)前回に続き、兵庫県知事、斎藤元彦氏についてである。
まず経歴を見てみよう。
1997年11月15日、神戸市須磨区生まれ。
本名は「齋藤」だが、難漢字であるためだろう、斎藤を用いている。
元彦の命名は母方の祖父が、親族の仲人を頼んだ縁で、金井元彦元兵庫県知事にちなんでつけている。
そんなこともあり、斎藤氏は幼い頃から兵庫県知事を意識するようになる。
この祖父はまた、神戸市の長田区や須磨区に多いケミカルシューズの業界の組合理事長を務めたことがあり、斎藤氏の実家もケミカルシューズ製造業である。
ケミカルシューズとは、塩化ビニールなどの合成樹脂を使ったケミカル素材(合成皮革)を用いて作る靴だが、神戸が中心になったのには訳がある。
神戸港は元々、生ゴムの輸入が盛んなため、この地はゴム長靴などの産地だったが、1945年ごろから生ゴムの配給が得られなくなった。
業者は合成樹脂を利用し、ケミカルシューズを製造するように。
これが1952年のことだ。
斎藤氏が地元の小学校を経て中学受験をしたのは私立の六甲学院だったが、あいにく不合格。
愛媛県にあるやはり私立の愛光学園に進学し、六年間の寮生活を送る。
そして一浪の後、東京大学へ。
経済学部では一年の留年も経験している。
こうしてみると、エリートには違いないのだが、キレッキレのエリートとはまた違っている。
そして大学卒業後に選んだのが、その前年に設置された総務省。
総務省の名に私などはまだ違和感があるが、要は昔の自治省だ。
2001年、総務庁、郵政省、自治省が統合されて総務省になったが、政治学者の飯尾潤氏によれば「自治省が生き残りをかけて総務庁を吸収した」。
また元内閣官房長官の石原信雄氏は、総務省には戦前の内務省ほどには力がないと語っている。
1947年、内務省はGHQによって解体され、廃止され、代わりに1949年、地方自治省が、1960年には自治省が設置され、2001年の総務省へと至るわけだ。
いずれにしても総務省が地方自治体に対して強い影響力を持つことは言うまでもなく、斎藤氏の総務省入りは、兵庫県知事になるという目標の第一歩だったのだろう。
動物にタブーはない! 動物行動学から語る男と女
竹内久美子(動物行動学研究家 エッセイスト)