… … …(記事全文3,462文字)パリ五輪、女子ボクシングで性別疑惑の2選手、66級のイマネ・ケリフ選手(アルジェリア)と57級のリン・ユーチン選手がどちらも金メダルを獲得した。
この問題を巡っては、特にケリフ選手のほうに凄まじいまでの憎悪が向けられている。
性染色体がXYなら、男に決まっているだろ!
股間がもっこりの写真がいくつもあるぞ。
イタリアのアンジェラ・カリニ選手と対戦したあと、彼女の胸をつかんだのは男だからだ(例の開始46秒でカリニ選手が棄権した試合)。
男が女を殴り殺そうとしている。
私はここでいくつかの誤解を解いていきたいと思う。
・ケリフ選手もリン選手も、オリンピックに出場するにあたり、何らルール違反を冒していないこと。
オリンピックでは2000年のシドニー大会から性別検査が廃止された。
また男性ホルモンのテストステロン値も測定されない。
どうしてそうなったかについては前回に説明している。
・ケリフ選手らはトランスジェンダーではなく、性分化疾患(DSD disorders of sex development)であり、出生時に女の子とみなされ、女の子として育てられた。
最初にインフルエンサーがトランスジェンダーとして広めてしまい、日頃からトランスジェンダー女性が女子スポーツに参加し、メダルをかっさらう様を見ている人たちに怒りの火をつけたが、それは誤りである。
・オリンピックではトランスジェンダー(MTF)の選手に対しては種目によって違いがあるものの、性別適合手術を受けていることや12カ月以上前からのテストステロン値が一定以下であることなど、条件を定めている場合がある。
・IBA(国際ボクシング協会)が昨年の世界大会でケリフ選手とリン選手を失格としたが、なぜこの2人なのか、基準は何なのか、その根拠は何かが不明である(2人がXYの状態であるというのは確認されていない)。
・フランスの女子ボクサーでケリフ選手とも対戦したことがある、エミリー・ソビンコ選手がフィガロ誌(仏)に語ったところによれば、IBAの〝検査〟はズボンを降ろして中をチェックするのみだった。
血液などの検査はなかった。
さらに、こうも言っている。
「イマネは女性であること、女性として生まれたことに疑いの余地はない」
そしてこの件が一番引っかかるのだが、
・IBAはロシアが主導する団体であり、2人の選手を失格にしたのは、無敗を誇っていたロシア選手、アザリア・アミネワ選手がケリフ選手に敗れた直後である。
そのことにより、アミネワ選手の無敗記録は復活した。
つまり、ケリフ選手らの失格は意図的なものとみなせるのではないだろうか。
そのような背景があることを踏まえ、今回は性染色体がXY(つまり男性型)でありながら、生まれた時の外性器の様子から女の子とみなされるケースについて説明してみたい。
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