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皆さんはBL(ボーイズラブ)というジャンルをご存じだろうか。
今や小説やコミック(漫画)、ドラマだけでなく、アニメやゲームの世界にまで進出し、年を経るごとに熱狂的なファンを増やすという強烈な魅力を持った分野である。
その名の通り、物語の中で愛し合うのは男(男の子)どうしである。
では男性同性愛者がターゲットなのかというと、まったく違う。
実際、研究者が彼らにBLを読んでもらい感想を聞いたところ、「こんなのお話にならないじゃない」と笑われたのだ。
主な読者は女性異性愛者である。
なぜ男どうしが愛し合う物語を女が好み、それも強烈に惹かれるのだろう。
BLの始まりは1970年代にある。
それも、日本、ヨーロッパ、アメリカなどの何か国で同時発生している。
インターネットのない時代である。
女性の意識を一斉に変革するような何かが起きたからとしか考えようがなく、それはフェミニズムの高まりなのかもしれないと思うが、依然として謎である。
日本では初期の頃には「やおい」と呼ばれ、「やまなし」「おちなし」「いみなし」の意味からであるという。
つまり、作品がストーリーとして今一評価されていないということなのだろう。
ストーリーよりも性描写に力点が置かれているらしい。
ところがやがてストーリー性が高まり、男女の恋愛のようにプロセスがきちんと表現されるようになって、2000年代の初め頃にはBLと言われるようになった(もっとも「やおい」も「BL」も内容に変わりはないという意見もある) 。
海外では「スラッシュ小説」と言われることが多い。
その際、非常に有名な二人の男性、たとえば「スタートレック」のカーク船長とスポック博士、「シャーロックホームズ」のシャーロックホームズとワトソン博士といった組み合わせで愛しあう物語となる。
ちなみに日本のBLが少年どうしであることが多いのに対し、スラッシュ小説では大人の男、というかおじさんどうしだ。
ともあれ、あまりにも有名な二人組なので、二人の関係や背景などを説明する必要はなく、いきなり物語が始まる。
実際、「カークはスポックにこう言った」で始まるものがあるのである。
スラッシュというのは、このような二人の人物のイニシャルの間に仕切り線のスラッシュが入り、「K/S」ものと表現されるからだ。
さてこのように男どうしが愛し合う物語を、なぜ女が熱狂的に受け入れるのだろう?
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