… … …(記事全文4,905文字)新渡戸稲造の「武士道」は,日本人の武士道精神を理解する上で重要な書籍で,当方も若い頃から何度か読んできましたが,この度,終戦直後にGHQによって焚書にされた「翻訳本」が復刻する事になりました.
その解説をと頼まれて,取り急ぎ,読んでみたところ…驚きました.現在出回っている岩波の翻訳本よりも圧倒的に分かり易く,かつ,新渡戸の思いがありありと伝わってくる秀逸な翻訳本だったのです.本書を読めば,岩波の翻訳本は単なる「文化的教養本」に過ぎない一方で,本書は武士道精神を感化する力が濃密にあったのです.
それは,岩波本が反戦主義者の一「学者」によって訳されたものであった一方,焚書となった今回の翻訳本は,戦前教育を担っていた「教育者」によって訳されたものであり,それ故に,圧倒的に人々の精神に訴えかける力があったからです.
ついては是非,本復刻版発行によせた当方の「解説」をご覧になってみてください.
出版までにはまだ少々時間がかかるかと思いますが,出版された暁には是非,手に取ってみてください!
焚書『邦文 武士道』の復刻によせて
海外で過ごした事のある方,あるいは,欧米人を含めた外国人と一定以上の交流関係を持つ人ならば誰しも,外国人の常識,あるいは倫理観念,道徳観念が,我々のそれと随分と違うのだということを身を以て感ずる経験をしたことがあるだろう.皆で物事を決める時にずけずけとしゃしゃりでて自分の都合を過剰に主張せず,仮にすることがあっても控えめに言いにくそうに自分の状況の理解を口にする,あるいは皆で作業をしているときにいち早く自らがなすべきことあるいはなしては成らぬことを察しようとする,そして,適切に察することができなければ自責の念に駆られる――等の,いわば「日本的」な精神態度は外国人においては全く見られない,等がそれだ.
それを一言で言うならそれが日本の文化や風習だということになるが,その日本固有の文化や風習の根幹にある倫理や思想の神髄に横たわるものこそが武士道という実践的倫理体系,倫理的実践体系である,ということをありありと理解させてくれるのが新渡戸稲造の著作『武士道』なのだ.
明治時代,札幌農学校でクラーク博士の下で内村鑑三や広井勇等と近代的教育を受けた新渡戸稲造は…
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