… … …(記事全文3,572文字)この年末,とあるところで国土強靱化について一筆書いてほしい,と頼まれましたので,簡単に書いてみました.まだ途中なのですが,書いているうちに悲しくなってきてしまいましたので…取り急ぎ,その最も悲しい部分,皆様に共有差し上げます(涙).
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南海トラフ地震や首都直下地震、そして、大都市における近年激甚化する台風による巨大高潮・洪水は文字通りの「国難」と言うべき超巨大災害である。したがってそれら国難に対する対策を図る「国土強靱化」の取り組みは、我が国における最も重要な政治課題の一つだ。
この認識は第二次安倍内閣誕生時において正式に政府の方針となり,内閣官房国土強靱化推進室の設置と国土強靱化基本法の策定,それに基づく五年毎の五カ年基本計画の指定と年次計画の毎年策定,そしてそれらの具体的実施に向けた内閣総理大臣を本部長とする国土強靱化推進本部の設定とその本部による進捗管理が毎年着実に進められる体制となった,
言うまでも無く国土強靱化は全省庁にまたがる取り組みであり,ハード,ソフト両面の複合政策だ.
そもそも政府が推進する国土強靱化は,東日本大震災直後に公表された「列島強靱化10年計画」がその基本となっている(藤井聡著『列島強靱化論』2011).この10年計画は,以下の「強靱化八策」を骨子とするものであった.
1.「防災・減災」のためのインフラ対策
2.「リスク・コミュニケーション」の推進
3.「地域共同体/コミュニティ」の維持と活性化
4.「有事」を用意した「強靭なエネルギー・システム」の構築
5.企業・工場の「BCP」の推進
6.「有事」の際の「救援・復旧対策」の事前想定
7.日本全体の「経済力」の維持・拡大
8.「強靭な国土構造」(=分散型国土)の実現
現在,政府が策定している国土強靱化基本計画は,第三期目の五カ年計画となっているが,以上の八策の内,「7日本全体の「経済力」の維持・拡大」を除く七策を複合する内容となっている.なお,7.は,安倍内閣当時は国土強靱化から切り離され「アベノミクス」として開始され,今日の石破内閣においてもその考え方は継続されている.
筆者はこの八策を推進するにあたって,「10年で200兆円の真水の純増」を提案していた.すなわち,毎年20兆円の政府支出拡大を図り,これらに基づいて八策の各プロジェクトを推進すべきだと主張していた.
こうした提案を図っていた2011年当時,自由民主党は野党であったが,その当時の谷垣総裁を中心とした執行部はこの10年で200兆円の国土強靱化(彼らは当時から,列島強靱化を国土強靱化という名称に修正し,その推進を図ろうとしていた)に賛同し,自民党の政策方針として「10年で200兆円で国土強靱化を推進する」と言明していた.
ただし,そうした主張における当初時点では「国費」が200兆円だったのが何時の間にか…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)