… … …(記事全文5,487文字)今日は,表現者クライテリオンで企画している「読書ゼミ」の日.
https://in.24criterion.jp/24bc_teika
この企画は,表現者クライテリオンの編集委員四人(柴山,浜崎,川端と藤井)が毎月ひとつずつ「名著」を取り上げ解説し,参加者の皆さんからの質問をお受けする,というもの.
これまでにもうかれこれ3,4年くらいやってきており,年に3冊ずつ,なので10冊近くお話しをしてきたのではないかと…思います.
これまで当方,プラトンの「国家」,内村鑑三の「代表的日本人」,福沢諭吉の「文明論之概略」,デュルケームの「自殺論」,西部邁の「思想の英雄達」や「知性の構造」,キルケゴールの「死に至る病」…等を取り上げて参りましたがこの度初めて,「小説」を取り上げることとしました.すなわち,今回は
三島由紀夫『豊饒の海』
を取り上げることといたしました.
「小説」には人生の節目節目で甚大かつ決定的な影響を与えられてきましたが,この「豊饒の海」はそんな小説の中でもとりわけ当方の人生にとって凄まじく巨大なディープインパクトを与えた小説.
小説についてのゼミ,というのも当方として初めての体験となりますので,あれこれ考えましたが,とりあえず,「あらすじ」をお話しした上で,「批評」「解釈」「解説」する事を考えています.
…ということで,今回は,以下の様な主としてあらすじをとりまとめたメモを纏めました.
ちなみに今,スタッフにお聞きしたところ,今からでも今日の6時半からのゼミにご参加頂くこともできるとのこと.また,その後にご登録されても,アーカイブでご覧頂くことも可能とのことでした.ついては今からでもご関心の方は是非,下記より,ご登録なさってみてください.
https://in.24criterion.jp/24bc_teika
なお,このHPに貼り付けてある動画では,豊饒の海のゼミの紹介を致しております.まずは是非,そちらの動画もご覧頂ければと思います.
いずれにしてもまだお読みになっていない方は是非一度,三島由紀夫の最高傑作,豊饒の海をご一読いただきたいと,思います.
【『豊饒の海』 読書ゼミ】
・三島由紀夫の最後の長編小説。世界中で翻訳される,三島文学の最高峰.
・『春の雪』『奔馬(ほんば)』『暁の寺』『天人五衰(てんにんごすい)』の全4巻
・「天人五衰」の入校日に,市ヶ谷駐屯地にて盾の会森田と共にクーデターを敢行,失敗し,割腹自殺(1970年11月25日)
・20歳で死に,輪廻転生する4人の若者の物語(清顕⇒勲⇒月光姫(ジン・ジャン)⇒透)
複数巻に登場する重要人物:本多,聡子
・『春の雪』:明治~大正.雅,貴族の世界を舞台にした清顕と聡子の恋愛の物語
『奔馬』:昭和初期.刀.『神風連史話』を愛読する右翼青年勲のクーデター物語
『暁の寺』:戦後昭和.愛欲.タイ王室の官能的美女ジン・ジャンと唯識論(※)を突き詰めようとする初老男性(本多)との物語
『天人五衰』:昭和末期(~平成・令和).ニヒリズム.近代人と化し,朽ち果てていく少年の物語
※『神風連史話』:架空の歴史書.『奔馬』について三島は、〈『英霊の聲』や『剣』の集大成〉だとし、〈これを読めば本当の僕がわかってもらえるだろう〉と語っている
※唯識論:全ての存在は「識」のみによって成り立っているという大乗仏教の見解.八識=五感覚(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)、意識、2層の無意識(末那識,阿頼耶識).したがって,存在は全てえ無常であり空である.
・「豊饒の海」:三島は、作品完成前に有人ロケットの月面着陸(1970年7月)が行われることに触れて、〈月のカラカラな嘘の海を暗示した題で、強ひていえば、宇宙的虚無感と豊かな海のイメージとをダブらせたようなもの〉と述べている.
【第一部『春の雪』】
・明治から1914年(大正3年)まで。
・華族の松枝清顕は清顕は幼い頃に…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)