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藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

土木学会が公表「首都直下地震で1000兆円」。しかし、20兆円の政府投資でその被害を4割削減できる。政府には、この学術的情報を真剣に受け止めていただきたいと思います。
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昨日土木学会にて、巨大災害が起こった場合の被害の推計結果を公表いたしましたところ、NHK等のTV局各社、日経新聞等の新聞各社にその内容を様々に報道いただきました。

 

[NHK]首都直下地震の経済被害 1001兆円 土木学会が推計見直し

https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20240314/1000102907.html

 

[NHK]首都直下地震 経済など長期的被害1001兆円に見直し 土木学会

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240314/k10014390751000.html

 

[日経]首都直下地震で「被害1000兆円」 土木学会が推計

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC141OE0U4A310C2000000/

 

[読売]首都直下地震の被害、推計1001兆円に…土木学会「耐震化対策で被害軽減できる」

https://www.yomiuri.co.jp/science/20240314-OYT1T50203/

 

[TBS]首都直下地震で日本経済に1000兆円超の被害か「政府は適切なインフラ投資で被害額減らせることを認識して」 土木学会が報告書公表

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1054043?display=1

 

[時事]首都直下地震で1000兆円 資産と経済活動の被害推計―事前対策で大幅減・土木学会

https://www.jiji.com/jc/article?k=2024031400973&g=soc

 

[東京新聞(共同通信)]「首都直下」被害、1000兆円 土木学会推計、財政は389兆円

https://www.tokyo-np.co.jp/article/315190

 

[朝日]首都直下地震の被害額は1千兆円、対策すれば4割減 土木学会推計

https://www.asahi.com/articles/ASS3G5T8YS3FULBH005.html

 

本発表にご尽力頂いた委員会の皆様各位、そして、記者会見にご尽力頂いた関係各位、そして、記者会見にご参集頂いたメディア各社の皆様にまず、心から御礼申し上げたいと思います。

 

上記の様に、メディア各社に報道頂いたポイントは、

 

「首都直下地震の被害額は1千兆円超」

 

という点。ならびに、

 

「対策すれば4割減」

 

という二点です。

 

この1000兆円という被害額の主要な「被害者」はもちろん、首都圏の人々ですが、この会見で強調したのは、この被害はあくまでも「経済被害」ですから、その被害者は首都圏「以外」の人々にも及ぶという点です。

 

なぜなら、日本経済というものは様々に連関しており、そのメインエンジンである首都圏の経済産業が甚大な被害を受ければ北海道から九州沖縄に至るまで「無傷」では居られないからです。

 

そして、この1000兆円という規模の被害がどれほど恐ろしいのかと言えば、例えば記憶に新しいコロナ禍と比べてみれば直感的に理解頂けるものとおもいます。

 

コロナで人々が最も自粛し、最も大きな経済被害を受けた2020年の第二四半期にはおおよそ十数兆円強の経済被害が生じましたが、その直後には被害額は4兆円程度に軽減され、一年も経てば数兆円規模にまで縮小していきました。

 

したがって、コロナ禍前の経済活動水準に戻るまでの三年間で、コロナ禍根の被害額は総計で20兆円強となります。

 

このコロナ禍でも、日本国民は大いに苦しめられたのですが、この首都直下地震の被害1000兆円というのは、そんなコロナ禍の被害のおおよそ「50倍」もの水準に至るのです。

 

具体的に言うなら、首都圏の経済産業が深刻なダメージを受ければ、首都圏の多くの企業が倒産し、失業者と貧困者が溢れるのはもちろんのこと、そんな企業と関連する全国各地の企業も連鎖的に倒産し、全国各地に失業と貧困が拡大していく事になるのです。

 

しかし、上記報道で伝えられている様に、しっかりとしたインフラ対策を行えば、その被害の4割を軽減することができるのです。

 

そのインフラ対策というのは、首都圏における建築物や港湾の耐震強化と道路ネットワークの強靱化(耐震補強とミッシングリンクの解消)です。

 

そうした強靱化対策における政府負担分は、おおよそ20兆円。

 

20兆円と言えば巨大な金額に見えますが、被害額1000兆円に比べれば桁が二つも違う希帆。

 

したがって、今、我が国が直面している巨大な危機を真正面から捉えるなら、20兆円程度のインフラ投資など、有り体に言えば「僅かな金額」とすら言いうる水準なのです。

 

これを政府がもしも緊縮的思考で支出することを躊躇し、強靱化を行わなければ、我が国は1000兆円の被害にさらされる事になります。

 

しかし、20兆円をしっかり支出すれば、それがおおよそ400兆円弱も軽減できるのです。

 

もしも政府が合理的であるならば、この20兆円を支出しない理由など、どこにも無い筈です。

 

是非とも政府には、この土木学会が公表した学術的推計結果を真剣に受け止め、なすべき政治とは一体何なのかを真剣に考え、緊縮的思考で躊躇する事を避け、可及的速やかに「今求められる20兆円規模の首都直下地震に立ち向かうための強靱化」を進めていただきたいと、心から祈念いたします。

 

 


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