… … …(記事全文2,702文字)ここまで明白な詭弁が、総理大臣から国会答弁として公明正大に発せられるという事態は、極めて異例です。その国会答弁とは、子育て支援策の財源確保のために、社会保険料が一日あたり500円値上げになるが、それは事実上の増税ではないですか?という質問に対して「賃上げにより実質的な追加負担は生じない」と、だから増税ではないと否定した岸田総理の答弁です。
あまり何も考えていない国民なら「ふーん、そうなんだ。だったら、別に僕たちが毎月500円、政府におカネを余分に取られるってことは無いんだ」と安心することでしょう。
しかし、そんな事は全くないのです。実際に国民は平均で一人あたり500円、毎月負担させられるのです!
この答弁に対しては既に多くの国民から批判が寄せられていますが、この僅か19文字の中に、恐るべき事に5つもの詭弁理由が含まれているのです。
そもそも「詭弁」とは、『一見もっともらしいが、何らかの虚偽を含むと疑われるもの。相手をあざむいたり、困らせる議論の中で使われる。』ものです(広辞苑より)。したがって、一見もっともらしいけれど「ウソ」を含んだ相手をだますための言説を詭弁というのですが、この19文字の岸田発言の中に5つもの「ウソ」が含まれている、という次第です。
ついては以下、どんなウソがこの答弁の中に含まれているか、一つずつ解説して参りましょう。
まず第一に、「賃上げ」する対策を岸田総理はやろうとしていますが、それがどれだけ成功するか、それ以前にホントに成功して賃上げになるかどうかなどは全く分かりません。にも拘わらず、この答弁では賃上げが絶対起こる事を前提としています。その意味で、この言説は完全なるウソなのです。
(パチンコやったら絶対儲かりますヨ!と言って客引きしてるパチンコ屋と全く同じです。そんなの詐欺です)
第二に…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)