… … …(記事全文3,887文字)当方が京都大学の今のポジションに移動した15年ほど前から毎年、秋には藤井研究室を卒業して教授や准教授になった方々と、その学生さん達を集めて大きなゼミ合宿で行っています。
このゼミは「本ゼミ」というもので、我々が指定した本を学生さん達が読んで、報告してもらい、それについて我々教授陣が解説したり皆で議論したりする、というもの。
で、毎年この一番最後に、各先生方今関心持ってるお話しをする、という二日間のゼミなのですが、今年も一番最後に、当方から講話しました。
今回当方が講話した際に取り上げたのが、こちら。
『「過剰医療」の構造
~病院文明のニヒリズム』
(表現者クライテリオン 令和5年11月号)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CKBSHQC7
当方いつも、特定の出版について講話することはないのですが、それは、年に一回のゼミのシメには、数年、数十年の長期的なビジョンを話をすることにしていたからです。
ですから、今回のように特定出版をテーマに話をしたのは、これが初めて、だったのです。
今回のゼミで、当方が最初に口にした台詞は、次のようなものでした。
『最新の表現者クライテリオンのテーマは「過剰医療」なんですが、僕はこのテーマについては、「金脈」を掘り当てたような気持ちになっています。どういう意味で、このテーマが「金脈」なのか、説明したいと思います。』
ここに言う「金脈」というのはもちろん、文字通りの意味の「金儲けができる凄いテーマだ」というわけではありません。この「過剰医療批判」というテーマこそ、「日本を救う、今ままで思いもよらなかったアプローチだ」というものです。
なぜそう言えるのか…ここで、そのゼミでお話しした内容を簡単にご紹介したいと思います。
まず、当方は今まで、日本を救うためにはPB規律を凍結、撤廃することが必須である、と考えてきました。それさえできれば、政府が必要な積極財政を展開し、デフレを脱却すると同時に、日本にとって必要なあらゆる行政、つまり国土強靱化や国防力の増進、地方創生、食料・エネルギー自給率の向上といった行政が展開でき、日本が救われることとなるからです。
したがって当方はこれまで、様々な形でPB規律を撤廃するための取組を進めてきました。
ケインズ経済学やMMTの研究を進めたのも、安倍さんをはじめとした様々な政治家の皆さんへの働きかけを進めたのも、そしてあらゆるメディアやSNSでの取組を進めたのも、全てPB規律の撤廃を通して日本を救うことを目指してのものでした。
ところが、昨年、そのミッションにおいて何よりも重要な要素であった「安倍晋三元総理」が凶弾に倒れて死んでしまったのです…。
これを通して、当方は絶望的な状況に追い込まれました。
当方の人生があと20年から30年しかなく、その間に、「あれだけの政治力を持った人物がPB撤廃に一定の情熱を差し向けるという事態を創出する」ということが、絶望的に困難である、という現実に思いが至ったからです…。
そんな気分でおおよそ一年以上にわたって、あれこれを日本を救う手立てを考え続けたのですが…そこで思い至ったアプローチが、
「過剰医療批判」
というものだったのです…
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)