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藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

日経がまたも「詭弁とウソに塗れたトンデモ論説」を配信。こんな記事が無批判に世間に受け入れられ続ければ、「国家の大計を誤る」事になります。

日本経済新聞がまた、やらかしました。例によってまたまた、とんでもないコラムを“どや顔”で配信したのです。今日はそれがどれだけ出鱈目なものかを解説したいと思います。

 

今回の日経トンデモ・コラムは、

 

国を誤る積極財政の声(日本経済新聞『大機小機』2023年10月14日 )

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO75272270T11C23A0EN8000/

 

このコラム大機小機は、執筆者名が記載されていないもので、日11経新聞の公式の見解、となるものなのですが、そうであるにも関わらず恐るべき出鱈目に満ち満ちたものです。

 

その内容は、自民党の積極財政議連(共同代表・中村 裕之、顧問・城内実)が先日とりまとめた、岸田政権・自民党幹部に向けた「総合経済対策・補正予算編成に向けての提言」(https://sekkyokuzaisei.jp/video/r5hoseiteigen/)を徹底批判するものです。

 

この「提言」は、至極まっとうなもので、岸田政権が目指している「物価高から国民生活を守るととともに実質賃金の上昇を実現させ、デフレからの完全脱却による日本経済の安定的な成長」を着実に実現させるために必要な内容がまとめられています。

 

その概要は、消費税減税でコストプッシュインフレを抑えると同時に、賃金を着実に上げると同時に様々な政策課題を克服するために必要な企業支援、地方政府支援や公的投資拡充を提案しています。

 

この主張は、表現者クライテリオンの特集「インフレは悪くない、悪いのは低賃金だ」で述べたものと軌を一にするもので、極めてまっとうな内容です。

 

それであるにも関わらず、この日経コラムは

 

(1)この提言は単なる選挙対策に過ぎないもので、傾聴には全く値しない代物だ。

 

と断定しているのです。そして、その理由として、

 

(2)かつてあった需要不足はもう解消されており、積極財政は不要だ。

(3)実際、賃金が上がり始めているのであり、積極財政は不要だ。

(4)設備投資も活性化しており、積極財政は不要だ。

(5)積極財政が財政が悪化すると将来不安が高まり、人々の消費がさらに冷え込む。だから、消費活性化のためにも積極財政をやってはいけない。

 

を挙げています。

 

これら5つが、このコラムの骨子だが、驚くべき事にこれら全て完全な出鱈目なのです。

 

以下、一つずつ解説していきましょう。

 

(1)この提言は単なる選挙対策に過ぎないもので、傾聴には全く値しない代物だ。

 

積極財政議連は、今回の提言はこれまで何十回も重ねてきた議論をベースに改めてとりまとめたもので、かねてからの提言内容と基本的に変わらない。選挙とは全く独立に議論されてきたものであるにも関わらず、それを選挙狙いのポーズの提言だと断ずるのは、単なる詭弁の類い(論理学においては、このタイプの詭弁は「論点変更の虚偽」あるいは「幻法水煙」に分類される)であり、悪質な印象操作である。

 

(2)かつてあった需要不足はもう解消されており、積極財政は不要だ。

現在のデフレギャップ推計式に基づけば、需要不足は解消されていると言われているが…

… … …(記事全文3,020文字)
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