ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00178/20230708153223111235 //////////////////////////////////////////////////////////////// 藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~ https://foomii.com/00178 //////////////////////////////////////////////////////////////// 本日は、安倍晋三元総理の一周忌。 あの日、安倍襲撃の一報を耳にしたとき、俄に信ずることができず、あわててテレビをつけてみれば確かに、各局が安倍襲撃の様子を繰り返し報道が目に入ってきました。 その後テレビの前から離れることができず、ニュースを見続けましたが、状況を知れば知るほどに、極めて深刻な状態である事が分かって参りました。新聞記者の方々からいくつか連絡があり、コメント差し上げつつ、何とか生きていてほしいと願い続けましたが、昭恵夫人が病院に到着された直後に、ご逝去された旨が報道されました…。 あれから、一年。 ことある毎に、「安倍さんが生きておられたら…」という言葉が頭をよぎりましたが、既に安倍さんがいないまま、日本の政治は展開していきました。 そもそも岸田内閣が誕生したのは、「安倍晋三」の支援があったからこそ。岸田内閣が誕生した総裁選時、安倍さんが支援していた高市氏が一次投票でトップにたった岸田氏の支援に回らなければ岸田氏は総理総裁になることはできなかったのですから、それは誰もがしる事実です。 したがって、岸田内閣は、安倍さんの様々な意向を無視して政権運営は何一つできない…そういう体制を前提として誕生したものでした。 ところが、一年前の7月8日、安倍氏が凶弾に倒れ、政界から消えてしまってから、岸田内閣の「質」が全く異なったものとなったのです。 岸田総理が「増税」路線を鮮明にし、次々と「国民負担増」の諸政策を打ち出し始めたのは、かの7月8日以降の事でした。 安倍さんが存命だった昨年、閣議決定された「骨太の方針」では、PB規律の効力を引き下げるために、そのPB規律によって重要な政策選択肢が狭められることがあってはならない、という文言が導入されました。ですからもしも安倍さんが今年も存命であったとすれば、この昨年の記述をさらに加速し、PB規律の効力をさらに引き下げる調整を図っておられたに違いありません。 しかし、今年の骨太の方針には、「経常的歳出について毎年の税収等で着実に賄われる構造の実現に向けた取組を進める」という、社会保障費の増大や防衛費の増大に対応するための「構造」、すなわち「増税」を行うべしという記述が追記されてしまいました。 この記述は、安倍さんがおられれば、導入されていなかったに違いありません。 そして、このPB記述の寄り添うように、岸田総理は、「税務調査会」に「増税すべし」という内容が満載の答申を提出させるに至りました。 … もちろん、安倍さんは二度にわたる消費増税を行ったのは事実です。 しかし、もしもあのとき、安倍さんでなく、岸田さんが総理大臣を担当されていたとすれば、消費増税は延期されることなくあっさりと2015年に予定通り実施され、さらなる消費増税に向けた議論が進めされていた可能性は十二分以上に考えられます。 その意味において、繰り返しますが、安倍さんは100点満点の総理で無かったと言わざるを得ません。それは安倍さんご本人が一番よくご理解されていたことであったのではないかと思います。ですが岸田さんよりも、そしておそらくは他のどの与党議員よりも、財務省と戦い、積極財政を展開船とした(当時の)現役有力議員であったと思います。 例えば、先日『ザイム真理教』という財務省を徹底的に批判した書籍を出版された森永卓郎氏は、その著書の中で、安倍晋三氏の事を、総理のなかで唯一財務省と対立した、対峙せんとし続けた総理大臣だったと評しています。 政権与党に厳しい立場を取る森永氏であるからこそ、この見立てには十分な信憑性があるものと思います。 昨年の7月8日、安倍氏が亡くなった直後にかかってきた某新聞社の記者のインタビューの中で、記者から、「安倍さんをどう評価しますか?」と問われた時、当方は次のように回答しました。 「安倍さんは決して満点の政治家では無い。実に問題の多い政治家だった。100点満点でたった2点しか無い。98点ものマイナスポイントがあるほどに、問題が多かった。 しかし、現存の有力議員達は、その2点にも満たない。1点以下であったり、0コンマ1点程度の議員ばかりだ。中には、マイナス10点、マイナス100点の議員達が山のようにいる。 それを考えれば、安倍さんは、最高の政治家だった。 そんな安倍さんが他界されたことで、日本の政治はこれから大きく歪んでいくことになる。 日本の滅亡がこれでまた、より確実になったものと思います」 この当方のコメントは、記事に反映されることはありませんでしたが、「安倍晋三は100点満点で2点、しかし、最高得点の政治家である」という当方が申し上げたこの評価こそ、当方の偽らざる本音です。 事実、安倍さんの他界によって、岸田内閣が財務省傀儡政権として暴走を始め、アメリカの属国の度を急速に加速し始めました。 当方が、「こうして日本は滅び去る」という書籍(出版時には「グローバル植民地ニッポン」というタイトルに改変)の執筆を思い至ったのは、安倍暗殺の直後、昨年の7月下旬のことでした。 そして、今、日本はその時に構想した通りに、滅亡の道をひた走っています。 「安倍さんさえ生きていれば…」この言葉が、だからこそ、当方の脳裏を幾度となく繰り返されるに至った訳です。 しかし…安倍晋三が失われたのは、否定しようのない事実、です。 したがって、私たちは安倍晋三がいないことを前提に、日本再生の道を探らねばなりません。 … ただし、唯一の希望は、確かに安倍さんは最高の政治家ではありましたが、それでもなお、100点満点でわずか2点の政治家に過ぎなかった、という点です。 だからこそ、残された我々で、この2点を超える政治を展開する道を探らねばならないのであり、かつ、それは、わずか2点である以上、決して困難極まる道ではない筈、なのだと思います。 好むと好まざるとに関わらず我が国はもうすでに、中国やアメリカ、ロシア、欧州各国、そしてそのほかの全ての国々を「敵」としたグローバリズムという戦場における「戦」に参戦させられてしまっています。 無為無策を貫けば、ましてや外国への隷属の度を深めれば、その戦に敗北することは決定的となります。 我々は安倍晋三さんの生前のご尽力に感謝申し上げつつ、安倍晋三さんがおられないこの日本をいかにすれば、この戦において勝利に導くことができるのかを考え、実践していかねばなりません。 安倍さんがなくなって一年のこの機に、こうした思いを改めて深めつつ、安倍さんのご冥福を改めて祈念申し上げたいと思います。 安倍さん、生前の日本に対する様々なご尽力、改めて、本当にありがとうございました、この日本については、残された我々で何とかしていきたいと思います。 改めて、安倍さん、安らかにおやすみ下さい、そして、ありがとうございました。 追伸:”ご質問”は随時、受け付けています!このメールアドレス宛に直接ご返信下さい。 //////////////////////////////////////////////////////////////// 本ウェブマガジンに対するご意見、ご感想は、このメールアドレス宛に返信をお願いいたします。 /////////////////////////////////////////////////////////////// ■ ウェブマガジンの購読や課金に関するお問い合わせはこちら info@foomii.com ■ 配信停止はこちらから:https://foomii.com/mypage/ ////////////////////////////////////////////////////////////////
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)