表現者クライテリオンの最新号は、 『岸田文雄は、安倍晋三の思いを引き継げるのか?――「無策無敵」は政治にあらず』 https://www.amazon.co.jp/dp/B0B6XFT4RM/ ですが、もともとこの特集号は、 『宰相失格 岸田文雄』 というタイトルで、総理大臣としての岸田さんが、如何にダメなのかという事を徹底特集する事を予定していました。 実際、執筆者の方には、今回の特集は、『宰相失格 岸田文雄』というタイトルの特集なので、皆さんのお立場から徹底批判下さいね、そうすることが、今の日本を建て直す上で、一番大切なんですから、という趣旨で執筆依頼をお願いしていたのです。 だから、(奇しくも本誌が「遺稿」となってしまった)鈴木棟一さん等からは、 「僕は政治家に対してはいつも尊敬の念を持っている。日本のために責任とってやってもらってるんだから。でも、岸田さんに対してはそういう気持ちが全くもてない。」 「(自分の勉強会に来てもらって)おおよそ一時間、岸田さんに話してもらって、一応話しが終わった時に、『こんなつまらない話しを聞いたのが、生まれて初めてだ』って(聴衆の皆さんに)言った」 と、超辛辣な批判記事をお寄せ頂いたわけですし、政治学者の中島岳志氏からも、 「岸田さん程ブレる人は居ない。何と言っても彼は、目の前に居る人に応じて言う事を変えるひとだからです。しいて言うなら、ブレないことがあるとすれば、ブレるということくらいですね。つまり、ブレることだけが唯一ブレないんです。」 という主旨の同じく超辛辣なご批判をお寄せ頂いておりました。 それ以外にも、経済、資源、電力、コロナ対策など、あらゆる側面からみて、岸田政権は何もしていない、最低最悪の政権だという趣旨の寄稿を様々に頂いていました。 しかし、特集の編集作業を進める途中で、安倍晋三氏が凶弾に倒れ、急遽、安倍氏の追悼の趣旨も兼ねた特集とすることにしたわけです。 ただし、当時は、安倍さんに対する追悼の念が国民的に共有され、その遺志を引き継ぐと言いながら全く引き継ごうとしないという点をハッキリと浮かび上がらせることが、最大の岸田批判となるのではないかと……想定したのですが……その後、安倍さんに対する追悼の念は、統一教会の問題が拡大していくに従って急速に縮小し、今となっては国葬に反対する国民が過半数にまでなってきました。 そうなれば、安倍さんの遺志を引き継がないという事を明らかにすることを通した岸田批判、という想定が”現実離れ”したものとなってきてしまいました。結果、本特集が、岸田批判の特集であるという編集意図が、一般の方に分からなくなってしまった感があります。 誠に残念な話です。… … …(記事全文2,534文字)
藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~
藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)