□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2016年7月27日第574号 ■ ============================================================= 田中角栄の評価に関し、まるで正反対のNHKと週刊朝日 ============================================================= 意図的につくりだされたものか、それとも自然発生的に起きたのか、私にはわからないが、いま再び田中角栄の待望論が花盛りだ。 その流れに乗るかのように、NHKと週刊朝日が、相前後して田中首相失脚の大きな原因であるロッキード事件の闇に迫る特集番組を放映し、特集記事を掲載した。 すなわちNHKが7月23日、24日にわけて放映したNHKスペシャル「ロッキード事件 日米の巨大な闇」と、発売中の週刊朝日最新号(8月5日号)が掲載した「米国に嫌われた宰相 田中角栄の孤独」がそれだ。 しかし、そこで伝えようとしている事は、まるで正反対である。 すなわちNHKスペシャルは、ロッキード事件の本当の問題は、民間機トライスターをめぐる5億円の贈収賄ではなく、次期対潜哨戒機P3C導入をめぐるはるかに巨額な贈収賄疑惑であった。 当時日本は次期戦闘機を国産機にして自主防衛に道を開こうとしていたが、これに対する米国の強烈な巻き返しがあり、それに屈してP3C導入を決めたのが田中角栄だった。 田中角栄は、金に汚いただの犯罪者にとどまらず、とんでもない売国者だったというわけだ。 そして、軍用機導入に対する資金の流れまでは検察は追及できなかった。 それに手をつければ、一人の首相の犯罪追及にとどまらない。 日米安保体制の巨大な闇に手をつけることになる。 それはもはや検察の手の及ばない事だ。 ロッキード事件は巨大な闇の扉を開いたに過ぎない、と結論づけている。 米国と結託して田中角栄を逮捕した検察を、批判するどころか、褒めあげている。 いまのNHKを象徴しているようなおためごかしの特集番組だ。 それに対して週刊朝日の記事は正反対だ。 田中角栄が米国に潰された事を、あらたに解禁された米国極秘文書に基づいて立証した、文字通り真実追及の一大スクープ記事だ。 この週刊朝日の記事を書いたのは、奥山俊宏という朝日新聞の現役編集委員だ。 「米国の虎の尾を踏み、失脚した」という説がいま再び有力視される中で、その真実を追求したくて、新たに解禁された米公文書の密林に分け入ったと告白している。 彼(奥山編集委員)が、この週刊朝日の記事で明らかにしたことは、米国の田中角栄に対する驚くほど敵対的な評価だ。 間違いなく田中角栄は米国につぶされ、そしてそれに加担した日本側の官僚、政治家がいた。 それをうかがわせる貴重な記事だ。 しかし、だからといって「田中角栄はつぶされた」と決めつけるのも間違いだ。 米公文書が明らかにしたことは、田中にもまた非がなかったわけではなかったということだ。 田中角栄に、正しい対米外交のできる器量と、そして自らを助ける有能なスタッフがいたなら、失脚することなく、もっとうまく対米自立外交を実現できたような気がする。 田中角栄は、潰されるべくして潰されたのだ。 田中角栄が逮捕されてきょう7月27日で40年になる。 世界情勢も、日米関係も様変わりだ。 米国もまたかつての米国ではない。 いまほど対米自立が望まれる時はない。 田中角栄の待望ではだめなのだ。 田中角栄を反面教師として、もっと巧妙に対米外交のできる指導者を見つけなくてはいけない。 残念ながら日本の政治家たちは、どんどんと矮小化しつつある。 もはや頼れるのは、特定の政治家や指導者ではないのかもしれない。 それでは、頼れる者は何か。 ズバリ憲法9条である。 この私の想いは、もはや確信になりつつある(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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