□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2016年7月25日第572号 ■ ============================================================= ロシアの全面排除を避けたIOCの決定を歓迎する ============================================================= ロシアによる国家ぐるみのドーピング隠ぺい問題でロシアの五輪出場停止がほぼ確実視されていた中で、国際オリンピック委員会(IOC)が24日緊急理事会を開き、一定の条件の下でロシア選手の参加を認め、その判断を各競技の国際連盟にゆだねる結論を下した。 私はこの判断を歓迎する。 そして、おそらくそういうことになるだろうと予想していた。 ただでさえロシアと米国の緊張が高まってる国際情勢下にある。 それだけではない。 世界がことごとく分裂状態になりつつある。 そんな中で、世界で最大のスポーツ大国であるロシアの参加が全面停止になると、プーチンのロシアと世界の関係が決定的に悪化する。 それは不幸な事だ。 今度のIOCの決定に対しては、責任回避であるとか、毅然さを欠いたなどという批判がある。 その批判を承知の上での苦渋の決断であったに違いない。 その批判にまさる国際政治上の配慮があったと見るべきだ。 スポーツ評論家の玉木正之氏などは、「スポーツは政治に負けた」と酷評している。 スポーツ評論家の立場からすればそうかもしれない。 しかし、国際政治の観点から見ればそうではない。 いや、スポーツの祭典である五輪の観点から見ても、今度のIOCの決定は妥当だったと思う。 そもそも、間違いを犯した国に対して、世界がよってたかって制裁することは、極めて限定的、例外的に行うべきである。 そして、これまではそうだった。 制裁が当たり前のようになったのは、気に食わないとすぐに制裁発動する米国によってもたらされた、きわめて最近の傾向である。 黒人差別政策を国是とした南アフリカの白人政権に対する国際制裁に賛成した私が、自らの経験から言う。 国家への制裁措置は、誰もが納得する場合に限って、きわめて限定的、例外的にこれを行うべきである。 厳しい制裁は一歩間違えば戦争になるほどの意味を持つのだ。 ロシアの国家ぐるみのドーピングがそれに当たるかどうか。 ロシアを国家ぐるみで排除することが平和の祭典である五輪にふさわしいことか。 IOCの決定に反対するものは、そこまで考えるべきだと私は思う(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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