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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

参院選の投開票日を前にして思う 
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2016年7月8日第528号 ■   =============================================================   参院選の投開票日を前にして思う   =============================================================  私の専門と関心は外交と安全保障にある。  しかし外交・安全保障政策は政治と切り離して語ることは出来ない。  だから私は日本の政治に、嫌でも関心を持たざるを得ない。  おまけに、私は長く官僚をつとめてきたから権力の本質を見て来た。  権力を使いこなせない政治に国民を幸せに出来る事などできはしない。  そういう私には、今度の参院選の投開票日を前にして、どうしても書いておきたい事がある。  それは、参院選の直後から起きるであろう政局についてである。  おそらく、参院選に勝った自公政権はさらなる強化に向けて攻勢をかけてくる。  負けた野党は、その反省をすることなく、次の選挙に向けて党勢立て直しを図る。  こんな与党と野党では国民は浮かばれない。  選挙のたびに繰り返される既存の政党、政治家に一喜一憂するのではなく、政治を根本的に変えることを考えなければ、国民は救われないのだ。  日本はどうにもならないのだ。  たとえば今度の選挙の争点であるアベノミクスについて、与党は「前進」と言い、野党は「失敗」と強調する。  選挙の票を獲得するにはそう言うしかないからだ。  しかし、どちらも、日本の経済回復や国民の暮らしを守る具体策を実現できないままだ。  そして、選挙が終わったとたん、既存の政党、政治家たちは、あらゆる政策を置き去りにしたまま、次の選挙に向かって走り出す。  それが都知事選であり、次の衆院選挙だ。  しかし、あらゆる政策は取り残されたままだ。  この事は、外交・安全保障政策についても同様だ。  与党は中国・北朝鮮の脅威やテロの脅威を強調して改憲の必要性を訴える。  野党はそれを立憲主義違反だ、人殺し予算だと批判する。  しかし、どちらも中国の南シナ海軍事膨張やイスラム国の暴挙を止める政策は語らない。  その間に、情勢は悪化する一方だ。  もはや政局に明け暮れている余裕はないのである。  どの党が政権を取るとか、誰が指導者になるとか、そんな話ではない。  あえて刺激的な言葉を使えば、挙国一致、大政翼賛の政府の下で、平和と共生の政治の実現に向けて合意し、実施しなければいけないのだ。  なぜそれが出来ないのか。  それは、政治が特定の集団の利益を優先するものであるからだ。  強者にとっては強者の優位を守る政策を、弱者にとっては弱者の権利を主張する政策を優先するからだ。  もっと言えば、国民生活のあらゆる分野で利益集団が存在し、それらがそれらの利益を優先しようとするからだ。  それが政治であると言ってしまえばそれまでだ。  そして、それが許される贅沢な状況であればそれでもいいだろう。  しかし、もはやそういう状況にはなく、これからますます深刻になっていく事は自明だ。  平和も暮らしも人類の存在が脅かされるところまで来ている。  そのような状況を前にして、日本の政治がよりどころとする究極的な支柱はなにか。  それが憲法9条の精神なのである。  憲法9条の精神が、国内にあっては捨て去られようとし、世界にあっては通用しなくなっている。  そのようなときこそ、日本が憲法9条を本気で掲げて世界に呼びかけなければいけない。  そして世界の大多数の国民は、そういう国の出現を待っているのだ。  護憲政党や政治家は言うだろう。  だからこそ我々が政治において勢力を拡大しなければいけないと。  しかし、残念ながら彼らはそれが出来なかった。  憲法9条を守れなかった。  そうであるなら、いまこそ新党憲法9条で結束するしかない。  この事は、今度の参院選の後に、特に重要である。  なぜならば、今度の参院選の結果、この国から護憲政党が共産党しかなくなってしまうおそれが出てくるからだ。  共産党が悪いと言っているのではない。  共産党だけが憲法9条を唱えても国民はついてこないからだ。  共産党も、その他の弱小の護憲政党も、これまでどおり、バラバラになって護憲を呼びかけても、今までの繰り返しだ。  野党共闘でも勝てなかったのだ。  エゴを捨てきれず、選挙協力と言うごまかしで護憲を訴えても通用しないのだ。  護憲政党が、生き残りの為に憲法9条を利用するようでは、国民はついてこない事が証明されたのだ。  憲法9条を守れと主張する政党・政治家が偉いのではない。  憲法9条が偉大なのだ。  その憲法9条が存在の危機にある時に、憲法9条の下に、既存の政党、政治家が一つにまとまれないようでば、所詮彼らの護憲はいかさまだということだ。  憲法9条は単なる平和主義者、左翼主義者の政治的スローガンではない。  日本が世界に誇れる政治的基盤であり、最強の外交・安全保障カードだと信じる者たちが、我欲を捨てて一つの政党にまとまり、日本の政治を変える。  その時こそ、そして、そのことだけが、憲法9条を守り、日本の未来に希望をもたらす時だ。  もちろん憲法9条を変えて日米軍事同盟の強化で日本を守るべきであると考える国民も多い。  だからこそ自民党政権が政権政党であり続けてきたのだ。  しかし、その自民党政権もいまの安倍政権のままでは必ず行きづまる。  だから間違いなく自民党は生き残りの為に軌道修正を図る時が来る。  すなわち、日米同盟を優先しつつも、対米従属一辺倒から日本国民に少しは目を向ける方向に舵を切る。  中国やアジアとの関係を重視する外交に転換する。  より社会主義的な経済政策を取るようになる。  そして、そのような自民党政権になれば、安倍政治を否定する国民の中からも、自民党政権を容認する者が出てくる。  安倍首相の愚かなところはそこだ。  もし安倍首相が集団的自衛権行使の解釈改憲などと言う馬鹿な事をせずに日米同盟の強化だけを言っていれば、そしてもし安倍首相が原発政策や社会保障政策で国民の声に耳を傾けていれば、長期政権は保証されたようなものだった。  自民党が安倍政治に決別し、よりまともな政策を取るようになれば、憲法9条の下に野党が結集する必要もなくなる。  いや、野党そのものが要らなくなる。  安倍右翼・改憲政権を倒すために野党統一政党ができる事と、自民党が安倍政権に引導を渡してまともな保守政党に変貌するか、どちらが先に起きるかだ。  参院選の後の政局の焦点はそこにある(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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