□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2016年4月22日第336号 ■ ============================================================== サウジアラビアとオバマの米国が和解できない本当の理由 ============================================================== オバマ大統領が任期最後と言われる外遊に旅立った。 その最初の訪問国が、関係が冷却化したサウジアラビアだ。 オバマ大統領が、サウジアラビアにとって天敵であるイランの核疑惑に目をつむり、イランとの関係改善を進めた。 この事によって、米国とサウジアラビアの同盟関係にひびが入り、それを修復することがオバマ外交の最後の課題であるからだ。 ここまでは誰もが知っていることだ。 しかし、今度のオバマ大統領のサウジアラビア訪問でも、米国とサウジアラビアの関係は和解できなかった。 オバマ大統領のイランに対する融和策は変わらず、サウジアラビアのオバマ大統領に対する不信は消えなかったからだ。 ここまでは、きょう4月22日のどの新聞も報じている。 しかし、オバマ大統領に対するサウジアラビアの根強い不信の背景には、もうひとつの大きな理由がある。 それを、きょうの読売新聞が見事に教えてくれた。 それは、オバマ大統領のサウジアラビアに対する「ただ乗り」発言だ。 すなわちオバマ大統領は先月(3月)、米誌アトランティックのインタビューで、サウジアラビアを次のように「ただ乗り国家」と批判したという。 「経済力に恵まれ、アラブ諸国の中で主導的立場にありながら、中東全体の安定に尽力していない」と。 私は知らなかった。 こんな衝撃的で、軽率な発言を、オバマ大統領は公言していたのだ。 これに対し、サウジアラビアの王族は、「あなたは我々を傷つけるだけでなく、侮辱した」と激しく反発したという。 当然だろう。 サウジアラビアの王族にとっては、もっとも触れられたくない「不都合な真実」であるからだ。 この、「一大事件」を、きょうの読売で初めて知った知った私は、オバマが米国の大統領でいる間は、米国とサウジアラビアの関係は改善しないと思った。 じつはこのオバマのサウジアラビア批判は、アラブの国民のすべてが内心思っていることだ。 特に、資源に恵まれないが、政治的にも、知的にも、サウジアラビアより優れていると自負しているアラブの国々は、皆そう思っている。 レバノン人などは、皆、かげでそう言い合っていた。 石油がなければ砂漠に遊牧するベドウィンに過ぎないくせに、たまたま石油に恵まれ、それがオイルダラーと言われるほど高騰したためににわかに大金持ちになり上がった、そのくせに、その金を経済発展に有効に使う事が出来ずに、自分たちだけで無駄遣いし、おまけに米国に王制を守ってもらうために、イスラムの総本山を抱えているにもかかわらずアラブを裏切り続けてきた、と。 オバマにそう言われて反発するサウジアラビアの王族も、アラブの民からそう言われれば、ひとたまりもない。 サウジアラビアの王族がもっとも気にしていたところを、オバマ大統領に衝かれて、サウジアラビアは怒り狂ったのだ。 もっとも、アラブの民がそういうのならサウジアラビアは反論は出来ないが、オバマ大統領にそう言われる筋合いはない。 なにしろ、サウジアラビアを石油成金にさせたのは米国であり、そのサウジアラビアに米軍基地を置いて自らの中東政策のために利用し、アラブの大義を蹂躙して来たのは米国だったからだ。 中東不安の元凶は、米国とサウジアラビアの仮面の同盟関係であった。 それがいま、見事に破綻しつつあるということである(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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