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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

佐藤優が週刊アサヒ芸能で書いたシリア情勢解説
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2015年10月13日第839号 ■   =============================================================      佐藤優が週刊アサヒ芸能で書いたシリア情勢解説  =============================================================  きょう(10月13日)発売の週刊アサヒ芸能最新号(10月22日号)で佐藤優がシリア情勢について的確な解説をしている。  はたしてアサヒ芸能の読者がどこまでその意味を理解できるだろうか。  アサヒ芸能の読者にとどめておいてはもったいないので、ここに引用して佐藤優の解説の解説をしてみたい。  まず彼はロシアのシリア空爆を次のように解説する。  「ロシアの本音は『イスラム国』と自由シリアの双方を殲滅して、アサド政権がシリア全域を支配する状態にすることだ。アサド大統領は、自国民に対して化学兵器(毒ガス)を使用することすら躊躇しないとんでもない非人道的独裁者だ。ロシアもそんなことはよくわかっている。独裁的で非民主的な政権であっても、シリアを実効支配し、安定が回復され・・・ればそれでいい、というのがロシアの発想だ」と。  その通りである。  私が注目したのはアサド政権が化学兵器を使用した非人道的な政権だと断言しているところだ。  周知の通り化学兵器をどっちが使ったか(アサド側か、それとも反アサド側か)という問題は情報戦争の結果、結論が出ていない。反米論者やプーチンびいきは、米国が支援する反アサド政府側が使ったと主張する。これを一笑に付したわけだ。  もちろん佐藤は正しい。  そして、アサド政権はロシアの支援を大喜びだとして次のように書いている。  「アサドは10月4日に放映されたイラン国営テレビとの会見で、ロシアとシリアが主導するイスラム国掃討作戦が成功しなければ、『中東全体が崩壊する』と述べた・・・その一方でロシアとシリアは『テロとの戦い』で近隣のイラン、イラクと結束し、『成果を出せる』とした・・・」  つまりアサドはこう言っているのだ。  イスラム国はいまや世界の敵だ。イスラム国を壊滅するのが最優先で、それは世界のすべての国が賛同することだ。ところが、米国のやり方ではイスラム国を殲滅出来ない。しかし自分たちならできる、そうアサドは世界に宣伝していると佐藤は解説する。  これもその通りだ。  私が注目したのはその後、佐藤がこう続けているところだ。  「このようなロシアによるアサド政権に対するテコ入れを本音では歓迎しているのがイスラエルだ。イスラエルは過去4回、シリアと戦いで(いずれも)勝利した。アサド政権がイスラエルの実力を熟知しているので、決してシリア軍がイスラエルを反撃することはない。これに対しアサド政権が崩壊し、イスラム国が進出してくれば、この連中(イスラム国)は躊躇することなくイスラエルを攻撃するだろう。それが第5次中東戦争のきっかけになり、さらに第3次世界大戦につながる危険性がある」  まさしくイスラエルの代弁だ。  イスラエルに軍事的に劣っているシリアが決してイスラエルを攻撃しない、できない、ことを一番よく知っているのはイスラエルである。  そのようなシリアより、イスラエルのパレスチナ政策を批判するイスラム国のほうがイスラエルにとってはるかに脅威なのである。  だからイスラム国の伸長は許せないのだ。  しかし、佐藤が書かない事がある。  それはイスラム国が伸長したからといって直ちにイスラエルを攻撃す事はないというところである。  イスラム国の本当の目的はイスラエルを殲滅する事ではなく、カリフ制復活によるイスラムの復権である。  それは、長期的にはイスラエルにとっての脅威ではあるが、いますぐイスラエルが脅威にさらされる事はない。  それを知っていながら、「イスラム国が躊躇なくイスラエルを攻撃し、それが第5次中東戦争や第3次世界大戦になる」と大げさに騒ぎ立てるのは、アサドの詭弁であり、それはそのままイスラエルのプロパガンダである。  極めつけは最後にこう書いているところだ。  「EU諸国も本音では『シリアからの大量難民流出が止まるならば、アサド政権が続いても構わない』と考えているのだ。中東における米国の影響が後退する事は必至だ。『知恵の闘い』で、プーチンはオバマに対して勝利を収めた」と。  まさしくネタニヤフのオバマ批判の通りである。  しかし、だからといってネタニヤフが米国にかわってロシアに中東の支配者になってくれと言っているのではない。  ロシアに中東は支配できない。  これは米国に対するラブコールなのである。  かつてシリアは米国・イスラエルにとって反米テロを抑える便利な国だった。  アサド親子が独裁であったとしても、テロを押さえつけるには米国にとって都合のいい政権であった。  だから米国はアサド政権のシリアを重視してきた。  なまじ中東の民主化を言い出し、人権を持ちだして、アサド政権を倒そうとしたのが間違いだ。    もとに戻ってくれ。  プーチンのように独裁政権でも地域が安定すればそれでいいと割り切ってくれ。  引き続き米国は中東の支配者にとどまってくれ。  そうイスラエルはオバマ後の米国に期待しているのである。  佐藤の解説は、オバマはプーチンに負けたが、その後の米国政権にはうまくやってほしいと言っているのである。  しかし、その佐藤も、まったく言及しない国がある。  それがイランだ。  イランこそイスラエルの最大の脅威だ。  イランをめぐって米国、ロシア、中国、イスラエル、北朝鮮のせめぎ合いが続く。  中東の混乱は先が見えない。  日本の入り込む余地はない(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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