□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2015年10月3日第811号 ■ ============================================================= 邦人拘束者の一部は日本政府に情報提供していたと書いた産経 ============================================================= きょう10月3日の産経新聞は一面トップで大きく書いた。 スパイ活動容疑で中国公安当局に拘束された3人は次の通りだと。 すなわち、北朝鮮から脱出した日本人妻の子供、民間企業の社員、日中交流に尽力する人物、の3人であると。 驚いたのはその拘束者の一部は日本政府に情報提供していたと書いていることだ。 菅官房長官は9月30日の記者会見で記者の質問に答えるかたちで、日本政府がスパイを送り込んでいたことは絶対ないと断言したらしい。 記者も馬鹿な質問をするものだ。 たとえそうであっても、それを認める馬鹿はいない。 しかし、私は日本政府が積極的にスパイを送り込んでいたとは思わない。 いまはどうかしらないが、私の官僚時代には、日本政府にそこまでの諜報活動をする能力も意思も度胸もなかったからだ。 しかし、産経新聞が書いているように、情報提供者から情報を貰っていることは行っていた。 だからこの産経新聞の記事には信憑性がある。 そして、情報提供を受けていたとしたら、立派にスパイ活動に関与していた事になる。 産経新聞の記事の目的は、拘束された者たちは中国政府に脅威を与えるような活動をしたとは見受けられず、中国当局の強引な手法が際立つなどと書き、邦人拘束は新たな反日材料にされるなどと書いているが、こんな身勝手な記事はない。 脅威になるかならないかは産経新聞が判断する事ではない。 中国がどう受け止めるかだ。 そしてスパイ活動はすべからく脅威であり敵対行為なのだ。 そしてスパイ活動がらみの事件はあらゆる真実が隠される。 捕まった方が一方的に不利なのだ。 この問題は安倍政権では簡単に解決出来ないだろう。 私が産経新聞の記事で注目したのは次のくだりだ。 すなわちこう書いている。 2010年にも建設会社の邦人4人が拘束されたことがあったが、あの時と今では日本政府の初動はまったく違うと。 あの時は尖閣沖で起きた中国漁船衝突事件で中国人船長を拘束した直後に起きたので、日本への報復との見方があったため日本政府に緊張が走ったが、今回は日本政府は冷静に対応していると。 とんでもない見当違いだ。 あの時は不注意な軍施設の写真撮影でつかまった。 しかし、今度は、れっきとしたスパイ活動容疑だ。 しかも日本政府はその情報の提供を受けている。 中国がそれを知らないはずはない。 日本が情報提供者の人権を重視するなら、あの時以上に緊張しなければウソだ。 真っ先に救済に動かなくてはいけない。 しかし、日本政府は動かないだろう。 初動が冷静とはそういうことなのだ。 かつて我が同期の宮本駐中国大使が情報提供者から情報を金で買っていたことがばれてその情報提供者が捕まった時、日本政府は冷静だった。 情報提供を受けた事を認めようとしなかった。 今度の邦人拘束事件は、産経新聞が書くような、中国が反日材料として使うとか、自らの求心力維持に利用しようとしているというものなどではなく、日本にとって中国に借りをつくることになる事件である。 問題は長引き、水面下で幕引きされる可能性が高い。 冷静とはそういう事である(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)