□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2015年9月26日第790号 ■ ============================================================= 習近平の訪米をどう評価すべきか ============================================================= まだ終わっていない習近平主席の訪米を、誰よりも先に評価してみたい。 この大きなテーマについて一言で述べるのはあまりにも大胆だが、それを敢えて行う。 なぜならば、どんなに長い論文を書いてみても、突き詰めればその本質は一つであるからだ。 その一つとは何か。 米国一強の戦後の国際政治体制に挑戦し続ける中国と、それを警戒し、不快感を抱きながらも、受け入れざるを得ない米国、それを見事に証明した歴史的な訪米だということだ。 これは好むと好まざるとに関わらず、大きな歴史の流れなのである。 中国が米国をしのぐ覇権国になる事を隠そうとしなければ米国はそれを許さないだろう。 しかし中国は予見される将来の長きにわたって、それをしない。 中国が目指すのは米国に追いつき、対等な大国になることだ。 それでも、いまの中国が軍事的、外交的に弱ければ米国はもちろん強硬に出るところだが、気がついてみたら、もはやそれを許さないところまで中国は来ていたというわけだ。 そうなれば共存するしかない。 そして外交によって国益を実現するしかない。 ところが、軍事力を行使しない、出来ない、米国ほど、脆弱な大国はない。 かくして米中は、国益をぶつけ合いながら外交的駆け引きに終始し、最後は中国が望む通りの米中二大国関係を米国は認めざるを得なくなるだろう。 その始まりを告げるのが今度の習近平の初の米国公式訪問なのである。 2年前の習近平のカリフォルニア訪問の時とくらべ歓迎の色合いが無くなったとメディアは報じる。 それは当然である。 しかし、その一方で今度の習近平の訪問が対立的に終わることはない。 私が驚いたのは、習近平訪米の直前に報じられた中国軍機の米機接近事件だ。 すなわち米国防総省のクック報道官が9月22日の記者会見で、9月15日に黄海上空で米軍の偵察機に中国機が150メートルまで接近し、「安全ではない飛行をした」と発表した。 こんなことが起きれば普通は大騒ぎだ。 しかし、これに対して中国政府は一歩も譲らない。 中国外務省報道官は、中国は国際法に基づき海上や空の安全を守っていると反論した。 中国軍関係者は、習近平訪米直前になぜ7日前の事を米側が発表したのか、政治的な思惑があると語った。 それに対して米国は黙り、米中首脳会談では偶発的衝突回避の行動規範づくりで合意した。 サイバー攻撃問題に至ってはさらに中国は強気で米国は防戦一方だ。 そもそもサイバー攻撃は秘密裏に行うからこそサイバー攻撃であって、どちらもそれを公然と認めるわけにはいかない。 しかもサイバー攻撃については米国の国家的サイバー攻撃は世界に周知されてしまった。 かくしてサイバー攻撃問題も米国の牽制に終わらざるを得ない。 サイバー攻撃は悪だという痛み分けに終わらざるを得ない。 これを要するに米中は、どんなに深刻な問題が起きようが、戦争ではなく外交的に解決せざるを得ない関係になったということだ。 そして外交的な攻防では中国の強気で、建前論の前に、米国は譲歩せざるを得ないということだ。 極めつけは、今度の習近平の訪米で、中国経済の影響力の大きさが世界に見せつけられたことだ。 ボーイング300機の「爆買い」がそうだ。 人民元の主要通貨への地固めがそうだ。 何といっても米国のIT企業のトップが一堂に集まって習近平と面会したことだ。 これを9月26日の日経はこう書いている。 「米国を代表するシリコンバレーの経営者たちが中国になびく姿は、オバマ氏の目に無言の圧力と映ったはずだ」と。 安倍首相には逆立ちしても出来ないことだ。 このような米中関係を前にして、中国を脅威だと言ってるようでは取り残される。 対米従属の日米同盟が最優先だと言っているようでは外交的に敗北する。 米中関係の発展をいまいましく眺めるしかない。 それをやっているのが安倍首相である(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)