Foomii(フーミー)

天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

アブドラ・サウジ国王の死去に中東混迷の行く先を憂う
無料記事

□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2015年1月25日第72号 ■   ==============================================================   アブドラ・サウジ国王の死去に中東混迷の行く先を憂う  ==============================================================  日本のメディアが邦人人質で大騒ぎしていた23日、アブドラ・サウジアラビア国王の訃報が報じられた。  日本のメディアは大きく取り上げなかったが、アブドラ国王の死が如何に大きな意味を持っているか、世界は知っているからこそ大きく取り上げた。  イスラム国という化け物が生まれ、中東の将来が誰も制御できないほど混迷しようとしているこのタイミングで、アブドラ国王が死去した事は暗示的だ。  私がアブドラ国王を最後に見たのはたしか2002年3月にベイルートでアラブ首脳会議が行われた時だった。  あの時、アブドラ国王は中東和平問題で、イスラエルの全占領地からの撤退と引き換えに、アラブ各国がイスラエルを承認するという関係を構築しよう、という提案を行った。  思えばあの時のアブドラ国王こそ、その絶頂期にあったと思う。  この提案は、トーマス・フリードマンという米人記者がすっぱ抜いて、レバノン紙の一面を飾った。  それを興奮して本省に送った記憶がいまよみがえって来る。  もちろん、この提案は実現に至らなかった。  サウジアラビアと言う国は、メッカを抱えるイスラムの総本山の国であるにも関わらず、最大の油田国として米国の庇護から逃れられない。  中東和平の最大の障害であるイスラエルと敵対出来ない。  アブドラ国王の苦悩がここにあり、そしてそれはそのまま後継者サルマン国王の苦悩でもある。  そしていま、中東和平がますます悪化している中で、イスラム国という本物の化け物が現れたのだ。  それはもちろん中東を不正義な形で支配し続ける欧米に対する挑戦だ。  しかし、かつてのアラファトがいみじくもそう叫んだように、パレスチナを見捨てたアラブの支配者たちへの挑戦でもある。  実は、私が書いた「アマル」の中の、サウジアラビア国王のモデルは、アブドラ国王だった。  あそこに出てくるイスラム武装抵抗組織のリーダー・ハッサン師が語る言葉、つまり中東和平が不正義のままで終わるなら、自分も制御できない恐ろしい事態が来る、と予言させたのは、イスラム国の事であった。  私の近未来小説は、主人公の犠牲と引き換えにハンピーエンドに終わる。  その鍵は米国大統領とサウジアラビア国王の決断だった。  それをうながしたのは憲法9条を持つ日本だった。  残念ながら現実の国際政治はその逆を行っている。  このままでは中東は、いや世界は、誰も制御できない更なる対立と犠牲の混迷に突入するだろう。  そして途方もない犠牲を前にしてはじめて和解の動きが起きる。  人類は血みどろの争いを永遠に続けることは出来ないからだ。  しかし、それは勝者のない不毛な混迷だ。  いずれ和解せざるを得ないなら、そこに至るまでの膨大な犠牲は無益な犠牲ではないか。  そうあってはならないという思いで私はアマルを書いたのである。  昨年5月の事であった。  それから8か月。  事態は急速に悪化している。  連日同じような顔ぶれがメディアに登場して無意味な評論を繰り返している。  そんな評論をしている時ではない。  事態を解決する事である(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今月発行済みのマガジン

ここ半年のバックナンバー

2025年のバックナンバー

2024年のバックナンバー

2023年のバックナンバー

2022年のバックナンバー

2021年のバックナンバー

2020年のバックナンバー

2019年のバックナンバー

2018年のバックナンバー

2017年のバックナンバー

2016年のバックナンバー

2015年のバックナンバー

2014年のバックナンバー

2013年のバックナンバー

2012年のバックナンバー

2011年のバックナンバー

2010年のバックナンバー

2009年のバックナンバー

このマガジンを読んでいる人はこんな本をチェックしています

月途中からのご利用について

月途中からサービス利用を開始された場合も、その月に配信されたウェブマガジンのすべての記事を読むことができます。2025年12月19日に利用を開始した場合、2025年12月1日~19日に配信されたウェブマガジンが届きます。

利用開始月(今月/来月)について

利用開始月を選択することができます。「今月」を選択した場合、月の途中でもすぐに利用を開始することができます。「来月」を選択した場合、2026年1月1日から利用を開始することができます。

お支払方法

クレジットカード、銀行振込、コンビニ決済、d払い、auかんたん決済、ソフトバンクまとめて支払いをご利用いただけます。

クレジットカードでの購読の場合、次のカードブランドが利用できます。

VISA Master JCB AMEX

キャリア決済での購読の場合、次のサービスが利用できます。

docomo au softbank

銀行振込での購読の場合、振込先(弊社口座)は以下の銀行になります。

ゆうちょ銀行 楽天銀行

解約について

クレジットカード決済によるご利用の場合、解約申請をされるまで、継続してサービスをご利用いただくことができます。ご利用は月単位となり、解約申請をした月の末日にて解約となります。解約申請は、マイページからお申し込みください。

銀行振込、コンビニ決済等の前払いによるご利用の場合、お申し込みいただいた利用期間の最終日をもって解約となります。利用期間を延長することにより、継続してサービスを利用することができます。

購読する