□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2014年4月8日第297号 ■ ========================================================= このタイミングで日豪協力を喧伝する安倍政権の愚かさ ======================================================== 豪州のアボット首相を迎え、安倍首相がやたらに愛嬌をふりまいている。 プーチン大統領との関係が頓挫し、もはや豪州しか相手にする国はなくなったのかと思えてくるほどだ。 そしてこの機会に安倍政権は日豪EPA合意を急ぎ、日豪安保協力を強化して、それを日本外交の成果のように喧伝している。 しかしそれは大きな戦略ミスだ。 なぜか。 ひとつは米国との合意よりも豪州との合意を先行させたからだ。 そもそも自由化の政治決断は二国間交渉の場ではなく多角間交渉の場でこそ行うべきでる。 特定の国との関税引き下げ合意は第三国に等しく適用する。 これがガット、WTOのいわゆる無差別原則であり、貿易立国の日本がもっとも裨益してきた原則だ。 その多角的交渉が行き詰まったから有志の国の間で地域取り決めを行う。 当然ことながらそれは非加盟国に対する差別取り決めとなり、強者に有利な交渉になる。 いつの間にかそのような地域貿易交渉が当たり前のようになり、その行きつく先がTPPだ。 今度の日豪EPAはそのような流れの中で合意された地域交渉であり、それ自体がWTOの精神に反するものである。 しかし、もはや地域主義が当たり前のように世界に広がってしまった以上、もはやそのような批判をしても始まらない。 だから百歩譲って日豪EPA交渉を是認したとしてもこのタイミングで日豪EPAを優先したことは誤りだった。 TPPこそが日本が最優先すべき場であり、政治的決断をする場はそこだ。 日豪EPAを優先させたことにより日米二国間交渉は更なる譲歩を迫られる事になる。 今度の日豪EPA合意を報じる記事の中で、日豪合意を先行させたことで、後に続く米国との二国間交渉で有利に立てるとする意見がある。 新聞がそう書くだけならまだしも、外務省の交渉担当者までがそう言っているから驚きだ。 米国にとって日本が従属国であることは自明だが、豪州もまた米国にとって取るに足らない国だ。 かつて米国の大統領が豪州を訪れた時、首都キャンベラの飛行場は米大統領の専用機を受け入れる設備が不十分であったがそれでも米国は強引に乗り込んで飛行場の施設の一部を壊したという事件があった。 この事が象徴するように米国にとって豪州もまた従属国のひとつだ。 米国にとっての従属国である日豪二か国が合意したからといって、それを武器に米国との交渉に圧力をかけることが出来ると安倍政権が本気で考えて日豪協議を急いだとしたらおめでたい。 米国はそれ以上の譲歩を当然のごとく求めてくるだろう。 日本はさらなる譲歩をさせられる。 しかも米国の安倍首相に対する更なる不信感だけが残る。 そして今度のアボット首相の訪日の際に、安倍首相は中国をけん制するために豪州との安保協力を進めると宣言した。 これも大きな間違いだ。 豪州にとって中国は重要な大国だ。 豪州は中国包囲網に加わる気はない。 中国もそれを知っている。 そして中国は豪州が中国に敵対することなど許さない。 そんな豪州と安保協力を進めて中国に対抗しようとする安倍首相は、いたずらに中国を刺激し、日中関係をさらに悪化させるだけだ。 このタイミングで日豪協力を喧伝する安倍政権は大きな戦略的誤りをおかしている(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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