□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2014年2月8日第130号 ■ ========================================================= 外務省で働くということ =========================================================== きょう2月8日の日経新聞の文化欄「ニュースクール」というコラムで「外務省で働く人」と題する大きな特集記事に目が留まった。 その記事はミャンマー語を専攻し、現在は東南アジア第一課に所属する外務省員の仕事ぶりを紹介している。 研修の為ミャンマーで二年間生活し、ミャンマー人との交流を深め、いま国と国との信頼の架け橋として自分に何ができるのかと、やりがいを持って仕事をする姿が描かれている。 この記事を読む限り外務省で働くことは国際交流に人生を捧げたいと考える若者たちにとってやりがいのある職場と映る。 実際のところ私もそう思って外交官をざした。 そしてその事に今でも悔いはない。 この特集記事に書かれている事はその限りでは正しい。 しかし、この特集記事に書かれて「外務省で働く」もう一つの真実がある。 それは外務省という組織が、権力におもねって間違った外交をするということだ。 そのことを目の当たりにした時に、組織内の人間としてどう対応するかというもう一つの現実がある。 たとえミャンマー外交である。 いまでこそ日本はアウンサンスーチーに好意的だ。 この特集記事も、ミャンマー語を専門とする外務省職員が安倍首相とアウンサンスーチー氏の会談の通訳をしている姿を大きく掲載している。 しかし日本政府はアウンサンスーチー氏を弾圧し続けたミャンマーの独裁軍事政権に好意的で、アウンサンスーチー氏に冷たかった。 国際情勢が急転し、ミャンマーが軍事政権から民主化に舵を切り始めたとたんに、経済進出や中国包囲網やらでミャンマー重視に転じた。 そこにはミャンマー国民の視点はない。 ことをこのミャンマー語の専門家である外務省職員が知らないはずはない。 これは一例だ。 外務省が行ってきた外交は、時の権力に迎合し、間違っていると知りながらその間違った外交を進める。 それを正そうする者は冷や飯を食わされ、権力に迎合する幹部は出世していく。 このような現実はどこの社会でもある、それが組織の論理だ、と割り切ってしまうのは簡単だ。 しかし会社や民間組織は、間違った判断を重ねれば会社や組織はいずれつぶれ、責任者はいずれ責任を取らされる。 ところが官僚組織にはそれがない。 どのような間違った外交を繰り返しても、権力に追従する限り権力によって守られ、権力が変わればあらたな権力に追従して生き残ればいいだけだ。 多くの外務省職員はこの不条理を日々目撃し、それを見て、見ぬ振りをしていかなければならないのである。 私が外務省員であった1969年から2003年の35年間はそうだった。 その前も、そして今も、この構図は何も変わっていないに違いない。 そして間違いなく今の外交は、私がいた時の外交よりも弱くなっている。 外務省という組織は劣化している。 外務省で働くということはこの現実にどう向かい合うかという事でもある(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)