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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

文民統制のなし崩しの崩壊が日本を危うくする
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン2013年12月31日第997号 ■     =========================================================                        文民統制のなし崩しの崩壊が日本を危うくする      ===========================================================  きょう12月31日の毎日新聞が一面トップで尖閣問題について特集記事を掲載していた。  その記事のポイントは、1972年の日中国交正常化交渉の時、「尖閣諸島問題についてどう思うか」と切り出した田中首相に対し周恩来首相が「今回は話したくない。石油が出るから問題になった」と語ったという史実を紹介したくだりである。  そして毎日新聞のその記事は当時の関係者の言葉を引用しながらこう書いている。日本側公式記録はここで終わり、別の話題に移る。しかし中国側の記録では、双方が「今後のことにしよう」と述べ、田中首相も棚上げに合意したと読み取れるようになっている。棚上げの明確な合意はなかったが、暗黙の了解はあった、暗黙の雰囲気はあったのではないかと。  そのことは既に様々なところで指摘されていることだが、私がその毎日新聞の記事で注目したのは、交渉が終わって帰国の途次についた大平外相が機中で森田秘書官に厳しい表情でつぶやいたという次の言葉である。  「今はお祭り騒ぎでいいかもしれないが30年くらいたったらいろいろ難しくなるよ」  その毎日新聞の記事はこれを次のように解説してみせる。  すなわち当時日本は尖閣を実効支配しており、あえて尖閣を取り上げる必要はなかった。他方中国は旧ソ連と対立しており日中国交正常化を急ぐ事情があった。また発展途上国にあった中国と4年前の1968年に世界第二の経済大国に躍り出たばかりの日本との国力の差は歴然としていた。お互いに深入りしないことが望ましい点では日中は一致していたが、大平は日本側が優越した状況でなされた尖閣問題の棚上げは、いずれ中国側から表面化すると見抜いていた、そしてその時期は大平が予想していたよりもはやく来た。1992年に中国が領海法を制定し、尖閣領有権を明記した時に現実のものとなった。日中間の尖閣問題はその時から始まっていたのだ、と。  そうなのだ。今日尖閣問題がここまでこじれた最大の原因は、中国の国力の増大とともに表面化してきた尖閣領有権問題に対し、日本政府がそれを真剣に受け止めて、外交的に的確な対応をしてこなかった怠慢さにあるのだ。  いま尖閣問題の棚上げ合意があったか、なかったか、ばかりが議論されている。しかし、本当はそんなことよりも、いままさしく棚上げしたほうが日本にとって得策だという判断を下す指導者があらわれてこないといけないのだ。  1992年よりも格段に国力を増大させた中国のほうが日中関係改善のために棚上げ論を提示しているというのに、国力が絶対的にも相対的にも低下している日本が「領土問題は存在しない」と突っぱね続ける。その外交がいかに稚拙で間違っているかをこの毎日新聞はあらためて教えてくれているのだ。  しかもこの毎日新聞の記事の注目点はそれだけではない。  ここからがこのメルマガの目的である。  毎日新聞のその記事は、近時の中国の軍事的拡大傾向について書いている。  その中で、先般の中国の防空識別圏の設定について、その運用面での行き過ぎを次のように書いている。すなわちそれが中国軍の強硬派が主導した結果であり、それに対する異論が中国政府内で出ていること、習近平国家主席は防空識別圏の設定については了承していたが運用面までは把握していなかったことを中国政府関係者の話として書いている。それはあたかも今年1月30日に起きた中国海軍艦船による日本の海上自衛艦に対するレーダー照射事件の時と同じだ。そして、今後は国家安全委員会(中国版NSC)が発足したから、こういう問題は起こらない、と中国政府関係者が明らかにしたと書いている。  これを要するに、中国は軍の独断の行動に対して政治のコントロールをこれまで以上に強化しようとしているということだ。  それはあたかも韓国政府が銃弾1万発事件の反省に立って、文民統制を強化しようとしていることと同じである。 ひるがえって日本はどうか。  文民統制に対する驚くべき甘さがある。日本版NSCの中に防衛省制服組が多数重用されるようになったのもそのあらわれだ。  シビリアンコントロールに甘い事が、日本にとって今後大きな問題として浮上してくるだろう。日本外交をますます毀損していくだろう。  この事は私にとっては重要なテーマであり引き続き新年のメルマガで書いていきたい。  この号をもって2013年の私のメルマガの最終号とさせていただきます。  この一年も、一日も休むことなく書き続けられました。  これも読者の皆様の励ましがあったからです。  新年もまた体力と気力の続く限り書き続けて行こうと決意をあらたにしています。  どうか読者の皆様におかれましては、良いお年をお迎えください(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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