□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年12月25日第978号 ■ ============================================================= これは深刻なシビリアンコントロール違反に違いない ============================================================ かくも早く、かくも深刻な疑惑が露呈するとは思わなかった。 韓国政府が日本と異なる政府見解を発表したからだ。 きょう12月25日の朝日が「『例外』の検証が必要だ」と題する社説で要旨次のように書いている。 すなわち今回の「例外」の妥当性を判断するには、わからないことが多すぎると。どういう経緯で国連から話があったのか。韓国側は切迫した状況で要請したわけではないと説明しているが、要請はどうだったのか。譲渡の方針を決めた国家安全保障会議ではどんな議論があったのか。そもそも安倍首相や防衛相ら少人数の会合である国家安全保障会議(日本版NSC)ではどんな議論があったのか明らかにすべきだろう、と。 私が昨日のメルマガで書いたとおりだ。 朝日の社説に言われるまでもなく安倍首相は自らの言葉で国民に説明すべきである。 そのことが韓国政府の異なる見解発表で避けて通れなくなったということだ。 おそらく安倍首相は慌てふためいているに違いない。 国会議員は与野党を超えて閉会中審査を行い事実関係を質すべきだ。 メディアはたとえ菅官房長官に睨まれようと執拗に問い質して国民に知らせるべきだ。 真相についての私の推測はこうだ。 今回の出来事の最大の原因は、日韓双方の現場の言動(韓国軍と自衛隊)がそれぞれの政府をふりまわした結果起きた失態である。 言い換えればシビリアンコントロールが利かなかった故の迷走だったのだ。 韓国側の事は韓国の責任だからここでは問わない。 日本の場合はこうだ。 南スーダンに常駐している自衛隊が、現地の韓国軍や現地の国連責任者とこの話を行い、その結果現地の自衛隊が、現地の日本大使館と十分に協議することなく、人道援助だ、緊急事態だと言って防衛省に弾丸供与の要請を連絡してきた(もちろん南スーダンには日本大使館はないが近くの大使館が管轄しているから相談はしようと思えばできるはずだ)。 ひょっとしたら既に現場の自衛隊は弾丸を供与してしまって、事後承認を防衛省に求めて来た可能性さえあると私は思っている。 あわてた防衛省が官邸に連絡し、すでに供与していたならそれをどのようにつじつまを合わせるかを議論し、そして決断を迫られていたなら、これこそが迅速な決断を売り物にしてつくった国家安全保障会議の仕事だと意気込んで、前後の見境もなく決断した。 いや、そのような意気込みさえなく、困ったことが起きた、しかし緊急だと言っているのだから、そして人道上の問題であると言っているのだから、認めるしかないだろう、という消極的な思いで決めたのではないか。 もちろん韓国政府に連絡して協議する手間をとることはなかった。 それが真相ではないのか。 韓国政府もまた同様な事情にあったと思われる。 だからこそ、この事件が明るみになって国内世論に批判され、あわてて日本の見解と異なる見解をせざるをえなかったのだ。 私は今度の事件については韓国側にも大きな責任があると考えるが、それは私がここで論じることではない。 問題は日本側だ。 今度の事件は、単なる軍事問題ではなく一大外交問題であるにもかかわらず、わが外務省の姿がまるで見えてこない。 ここにすべての鍵がある。 シビリアンコントロールが遵守されていたならば、弾薬提供の要請があれば、それが韓国軍からであろうと、国連責任者からの要請であろうと、それを受けた現場の自衛隊は、まず現地大使館に連絡し、現地大使館から外務本省へ連絡して官邸の決断を仰ぐのが筋である。 そうしていれば、外務省は当然韓国外務省と協議したはずだ。 今度のような日韓両政府の見解の違いが露呈することもなかったはずだ。 これを要するに、今度の事件は、意図的に武器輸出三原則のなし崩しを図ろうとか、これをきっかけに韓国政府に恩を売って日韓関係の改善に役立てようとか、そのようは浅知恵で行なわれたものでなかったと思う。 たとえ後になって「それもそうだ」という知恵が働いたとしても、最初からこのような決断を意図的に行なったということでない。 現場から突然提起された「緊急事態と人道的必要性」の要請に驚き、あわて、従って当然のことながら韓国政府との事前協議もなく決断し、それが報道されて今度のような事件となったということでなないのか。 しかし、それこそが今度の事件が大問題であるゆえんである。 シビリアンコントロールがまるで利いていないということだ。 現場の声にここまで振り回されるということだ。 常日頃から、PKO派遣先でどのような事態が展開されているかについて外務省も官邸もまるで把握していないまま、そのくせ自衛隊のPKO活動をどんどんと拡充しようとする。 そして、PKO派遣先の現場の声を鵜呑みにして一握りの為政者が国の将来を左右するような重大決定を下す。 これ以上の危険性はない。 ましてや安倍自民党政権である。 検証されなければならないのは、まさにその事である(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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