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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

日本のひとり負けに終る防空識別圏の大騒動
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン2013年11月30日第905号 ■   =============================================================      日本のひとり負けに終る防空識別圏の大騒動     ============================================================  突如として起きた中国の防空識別圏問題は、12月2日ー4日に行なわれるバイデン米副大統領の日中韓訪問によって急速に収束に向かうだろう。  もちろんバイデン副大統領のアジア訪問の目的はそれだけではない。  しかしこの問題は米中間で必ず取り上げられ、そして米中間で緊張感をもって意見交換され、妥協が図られる。  そしていつものように日本だけがバカを見て終る。  その事を指摘してこの問題についてメルマガで書くことを終わりにしたい。  これまでの報道、すなわち誰もが知っている公開情報に基づいてはっきりしていることは次の如くだ。  防空識別圏の問題のどこが大問題なのか。  それは防空識別圏を設定すること自体が問題なのではなく、その運用が問題なのだということである。  すなわちその運用が、国際法で認められる権利を侵害し、不測の事態を招く事のないように当事国の間で話し合って戦争に至る事態を回避することが重要なのだ。  だから中国に防空識別圏の設定を撤回しろと日本が文句をいう事は筋違いであり、そんな事に中国が応じるはずがない。  まっさきに防空識別圏を設置した米国が本気で中国にそれを求めることなどありえない。  問題の焦点は防空識別圏の運用におけるせめぎ合いなのである。  そしてこの運用の面で、米国は中国をけん制する。B52を飛ばしたり合同訓練を継続するのはまさしくそれである。  しかしそのけん制の応酬はこれ以上エスカレートしないだろう。  たとえば中国が緊急発進した事を発表したが、これは日中間の政治的問題なのだ。  これは11月28日に菅官房長官が不用意な発言をした事に対する中国側の政治的反発のメッセージに過ぎないのだ。  すなわち菅官房長官はこう言った。  中国が防空識別圏を設定した後も、自衛隊機がその空域で事前通告なしに警戒監視活動を行なっており、それに対し中国は緊急発進などの反応はない、と。  中国はこけおどしだと喧嘩を売ったのである。  それに対する中国の日本に対する返答なのである。  同時に中国は次のように日本にメッセージを送っている。  すなわち程永華駐日大使は朝日のインタビューにおいて、不測の事態にならないように意思疎通を図る制度や体制をつくり、相互信頼を高めることが基本だと(11月30日朝日)。  まさしく今度の防空識別圏大騒動の落としどころはこれしかない。  ところが小野寺防衛相はこれに応じないとあっさりと答えた。  ひるがえって米国の対応はどうなるのか。  米国がアジアにおける中国の軍事的拡大を警戒するのはその通りだ。  だからその事を中国側に伝えるために軍事的けん制行動をとるのは当然だ。  しかしそれが米中有事につながるかといえばそれはあり得ない。  あのシリアでさえ攻撃できなかったオバマ大統領がどうして中国と戦えるというのか。  すわ米中間で不測に事態は起こりうるのか、と思わせておいて、お互いの面子を潰さない形で有事回避の合意を図る。  これは意図されたシナリオや芝居であるのか、なかろうか、に関わらず、米中双方にとってそれしかないシナリオであり、しかも結果的に都合のいいものなのだ。  すなわち中国はその軍事的影響力の大きさを米国や世界に認めさせることになる。  一方の米国は日米同盟の有益性を日本国民に見せつけて、懸案の普天間基地移設問題やオスプレイ問題、さらにはTPPを含めたあらゆる対米従属政策を一気に解決することができる。  割を食うのは日本だ。いや日本国民と言うべきだろう。  この日本の滑稽さと哀しさを見事に言い表しているのがきょう11月30日の読売新聞の社説である。  その要旨はこうだ。  ・・・中国の国際ルールを無視した振る舞いに、とりわけ反発したのは米国である。中国にとっては誤算だったのではないか。中国の外交的孤立は、今や決定的になりつつある・・・中国は、識別圏が重なった空域について「共同で飛行の安全を維持すべきだ」と述べ、日本などに協議を提案した。尖閣領有権問題の存在を日本に認めさせようとの意図があるのだろう。日本政府が「中国の識別圏を前提とした協議は受け入れられない」と一蹴したのは妥当だ・・・日本は米国と一緒になって識別圏撤回に向けて働きかけていくべきだ。中国の国際常識を逸脱した行動をこれ以上認めてはいけない・・・  残念ながらいま世の中はこのような論調ばかりだ。  この様な考えがいかに間違いであり、ピントはずれでありかという声が、日本の政治家や有識者やメディアの中で、ただの一つも出てこないところに、私は日本の救い難さを感じざるを得ないのである。  かくして防空識別圏問題は急速に終りつつある(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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