□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年7月14日第518号 ■ ============================================================= 日本政府が拉致問題を解決できない根源がここにある ============================================================== きょう7月14日の日経新聞「風見鶏」というコラムで「田中均氏が残す日朝の謎」という伊奈久喜特別編集委員の記事がある。 その記事は、一言でいえば安倍首相と田中均元外務官僚の間で応酬された「記録を残していたかどうか」という事について田中均氏に厳しい評価を下した記事である。 しかしこの記事の注目すべき個所は、そこに書かれていた次のような光景である。 「・・・2002年8月21日、竹内行夫外務次官は自室に田中氏、谷内総合外交政策局長、藤崎一郎北米局長、海老原伸条約局長を集めた。田中氏はここで初めて日朝平壌宣言の案文を見せた。谷内、海老原両氏は驚き、文書の問題点を指摘した。田中氏は小泉純一郎首相の了解を得ている、と押し切る。不信感が残る。日朝交渉は田中氏らアジア大洋州局主導で進み、条約局からは最終段階で条約課長が参加したが、大事な場面には入れなかった。だから普通なら交渉経過を知るべき立場にあった当時の幹部は今も『記録を見たことがない』と語る・・・」 竹内は私の2年先輩、田中、谷内、藤崎は同期、そして海老原は2年後輩である。 この光景を始めて知った私は、拉致問題の解決がなぜ日本政府、外務省では出来なかったのかの答えを見る思いである。 ここで明らかになったことは、当時の小泉訪朝と拉致外交が、決して外務省として議論を尽くして練り上げた周到な政策ではなかったということだ。 すなわち田中が小泉首相と結託して独占的に小泉訪朝と平壌宣言合意を目指した。 それに対しそのほかの外務官僚が異を唱え、議論を尽くして対応策を考えたとすればまだ救いがある。 しかし決してそうではなかった。 外務官僚の出世争い、権限争いから生まれた小泉訪朝であったのだ。 たとえ奏功してもそれは決して正しい外交ではない。 成功すれば田中の個人的手柄になり、失敗すれば田中一人が悪者になる。 どちらも本来はそうあってはならない外交である。 私が注目したのは、知らされなかったとして反発したのが谷内と海老原の元、現条約局長経験者だということだ。 外務省の出世コースである条約局長を無視した田中の勇み足に谷内、海老原が反発したのだ。 小泉訪朝が成功していれば田中の外務次官は間違いない。 条約局長出身の同期の谷内としては耐え難い事に違いない。 しかし結果は失敗に終わり、田中は外務省を去って谷内が次官となる。 そして田中は今批判の矢面だ。 興味深いのは知らされていなかったと書かれているのが谷内、海老原だけであるところだ。 次官である竹内が知らされていなかったはずはない。 竹内次官にさえも知らせずに行ったならそれはクーデターだ。さすがに田中もそこまではやらないだろう。 竹内は知っていた。そして元条約局長として条約局長を飛び越して小泉訪朝を行おうとした田中の秘密主義には不満だったに違いないが、小泉首相の手柄になるのなら反対はできなかった。 だから次官室で関係者を集めて形だけの合意形成を図ったのだ。 そのタイミングは8月う21日である。そして小泉訪朝が行われたのは9月17日である。 少なくとも小泉訪朝は最終的には外務省内の手続きを踏んで行われたことになる。 問題は藤崎北米局長だ。藤崎がどこまで知らされていたかどうかは不明である。 しかし結果的には米国は小泉・田中の秘密外交に怒った。 知らされていれば米国を怒らせた責任は藤崎北米局長にある。 米国が怒ることがわかっていたなら藤崎はそれを田中に伝えて米国との調整を優先すべきだと説得すべきだったし、小泉首相の強い意向で電撃訪朝止む無しであったなら、米国の説得に努めるのは藤崎北米局長の責任である。 そして小泉首相である。 彼は国内の反発や米国の怒りを知って、たちまち拉致問題から手を引いてしまった。 今度の安倍・田中の批判合戦についても田中を擁護をすることは一切ない。 要する小泉首相は小泉訪朝がうまくいかなかった時点でまったく興味をなくしたのだ。 小泉首相にとっての拉致外交はその程度のものなのである。 信念無き政治家と、出世、権限争いを優先する外務官僚によって行われる外交。 これでは拉致外交が成功するはずはない。 そして最後のメディアの責任だ。 伊奈特別編集委員に8月21日の会議の模様を漏らしたのはその会議の出席者以外には考えられない。 メディアに極秘情報を漏らす外務官僚と、そんな外務官僚と緊密な関係を保って情報と引き換えに御用記事を書くメディア。 これもまたこの国の深刻な問題である(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

新しいコメントを追加