□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2013年6月9日第426号 ■ ============================================================= 見捨てられたままのシリア国民 ============================================================== 犠牲の規模においては米国のイラク攻撃とその後のイラクの混乱から受けたイラク国民のほうが大きいだろう。 一方的な弾圧という意味ではイスラエルのパレスチナ弾圧のほうが理不尽であろう。 しかし、それらに劣らない犠牲と弾圧が繰り返されているというのに、これほどまでに日本の報道が取り上げず、だから日本国民はほとんど知らない犠牲と理不尽がある。 それがシリア情勢である。 きょう6月9日の読売「ワールドビュー」において、前カイロ支局長の貞広貴志氏が書いていた。 あまりにも死がありふれて、もはやニュースにならなくなった、と。 自らのマヒした神経に慄然とする、と。 そこまではいい。 しかし、貞広氏は書かない。 なぜこんな悲劇が放置されているかの本当の理由を。 その事を見事に言い当てた記事を月刊情報紙「選択」の最新号(6月号)に見つけた。 「シリアはもはや分断されて統治されるしかない」というその記事は、シリア情勢をここまで悪化させた理由を次のように書いていた。 すなわちアサド体制が意気軒昂である最大の理由は、ロシアが支持しているからだと。 イランの支援を受けたレバノン民兵組織ヒズボラがアサド軍に加勢しているからだと。 その一方で反体制派はバラバラで、国際社会から受ける軍事支援も限られていると。 ここまでは誰もが指摘していることだ。 私が「選択」の記事で注目したのは、何故米国がアサド政権排除のために断固とした実力行使を行なわないのかについて書いた次のくだりである。 すなわちイラクやアフガンでの戦争で経済的、政治的に大敗北をした反省があることは理解できるが、オバマ大統領が決して口にしないもう一つの理由があるとして次のように書いている。 「・・・イスラエルと米国の『朋友』でもあったアサド政権を潰してしまって、その結果イスラエル北部方面が完全な無法地帯となり、イスラエルの領土がイスラム過激派武装組織の直接の脅威に晒される事態を招くべきではない、」という理由があると。 私が繰り返し書いてきたことだ。 しかしこの事をいくら私が繰り返しても、日本のメディアは書かない。 ここまで明確にアサド政権がイスラエルと米国の「朋友」と書いた記事を見たのははじめてだ。 しかし、その「選択」の記事でさえも書かない事がある。 イランの支援を受けているヒズボラはイスラエルと米国の最大の敵であるはずだ。 そのヒズボラとその後ろに控えるイランが、なぜイスラエルと米国の「朋友」であるアサド体制を支援するのか。 ここに中東政治のパラドックスがある。 私がレバノンにいた時に情報通から聞かされた事は、イスラエルや米国の天敵であるはずのヒズボラもまたイスラエルや米国と裏でつながっているというのだ。 つまりイラン・ヒズボラとイスラエル・米国は決して全面戦争はしないのだ。 彼らにとっての共通の敵こそアルカイダのようなイスラム・スンニ派の原理主義者、すなわちイスラエル・米国の言う「テロ」である。 シリアが「テロ」に支配されるよりはまだアサド独裁政権のほうがましだというわけだ。 その思いはイランもヒズボラも同じだ。 そしてイスラム原理主義こそがパレスチナ解放のためにイスラエル・米国と本気で戦っている。 パレスチナ問題の公正な解決なくしては、中東の不条理はなくならない。 中東の不条理の犠牲になるのは常に無辜の市民である。 貞広氏が書くべきはこの中東の国際政治の欺瞞と偽善であり、それを形づくる米国の大罪である(了) ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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