□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年7月8日第522号 ■ ============================================================== TPPは米国の陰謀ではないと書いた朝日の論説 ============================================================== 野田政権が続くとすれば、消費税増税や原発再稼動の後に、今度は TPP参加を強行してくるに違いない。 それを見越したかのように7月8日の朝日新聞「波聞風問」で編集 委員の原真人氏がTPP擁護論を書いていた。 私にとってはもはや議論の余地がないほどTPPに反対することは 自明であるが、原氏が次のように、もったいぶってTPPの「誕生秘話」 を紹介しているので一言書きたくなった。 原氏は言う。TPPの仕掛け人は米国ではなくシンガポールのリー・ クアンユー首相だったと。 すなわちTPPの源流は2006年にシンガポールがチリ、ブルネイ、 ニュージーランドと結んだP4協定であるが、それを「環太平洋に拡大 してはどうか」とワシントンで米政府要人たちに密かに口説いて回った のがリー氏だというのだ。 寡聞にして私はその事を知らなかった。 しかしたとえそうだとしても、米国がその誘いに乗って自国の利益の ために理不尽な圧力をかけてきていることは紛れもない事実だ。 原氏はそれを「米国陰謀史観」という言葉で一蹴しているが、米国の 陰謀などと言って反対している者はほとんどいないだろう。 米国の理不尽な要求の数々を知るにつけて、TPPに参加することは 日本のためにならないから反対しているのだ。 しかも、原氏が教えてくれたリー・クアンユー首相の次のような意図 を知るとますます反対したくなる。 すなわち、かつて日本のアジアでの影響力増大を警戒し、米国のアジア 介入強化を求めたリー氏が、いま警戒するのは中国だという。 そして米国がそれに乗って「アジアでの中国の影響力を中和する手段 として、米国を軸とするTPPを仕掛けた」(今野秀洋・元経済産業省 審議官)のだ。 何のことはない。米国が最近活発化しているアジア分断作戦の一つと いうことだ。 原真人編集委員はそんなリー・クアンユー首相をこう褒めちぎる。 「このシンガポール建国の父の強みは、絶妙の地政学的バランス感覚 だ。それが人口500万人の小国をアジアと米国を結ぶ拠点国家に発展 させた」と。 リー・クアンユー首相はマレーシアのマハティール首相と対峙する アジアの卓越した指導者だ。 そして私はリー・クアンユー首相よりもマハティール首相の方を高く 評価する一人である。 TPPを巡る論議の違いは、単なる経済政策の違いから来るのではない。 対米政策、対中国政策を含めた我が国の外交政策全体にかかわる考え方 の違いに由来するのである。 その意味でTPP論議は、まさしく国論を二分する我が国の大きな 政治選択の問題である。 原真人氏はその論文をこう締めくくっている。 すなわち国内のTPP論戦において「コメ問題が最大の争点では、 あまりにも狭すぎる」と。 その通りである。 TPP問題をコメ問題だけで反対している者はもはや限られている。 原氏が絶賛するリー・クアンユー首相のような「国家存亡をかけた視座」 から考えて、日本の国益にならないから反対論者は反対するのだ。 私もその一人だ。 国益は何かについての基本的考えが、TPP賛成論者と反対論者との 間で異なるということである。 コメ問題や貿易自由化問題にTPP問題を矮小化しているのは、むしろ 原真人氏のようなTPP推進論者なのである。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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