□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年6月15日第458号 ■ ============================================================== 日隅一雄さんが教えてくれたと思っている ============================================================== 日隅一雄さんの追悼を兼ねた講演集会に出席した私は、予定より早く 会場に着いたので、その下にある岩波書店のブックセンターで時間を 潰した。 そこで一冊の本を見つけた。 その本は「対米従属の正体 米公文書館からの報告」(高文研)という 本だ。 筆者は末浪靖司というジャーナリストで元赤旗論説委員をしていた人で ある。 初版が2012年6月10日となっているから出版されたばかりの本 だが、どこにも宣伝がないからこの書店に立ち寄らなければ私はこの本 に巡りあえなかったかもしれない。 日隅一雄さんが教えてくれたのだと思って2200円と言う高額は痛か ったが買った。 帰りの新幹線の中で、そして自宅に帰って、その本を通読し、あらため て思い知らされた。 この国の日米関係は密約で塗り固められたものである事を。 末浪氏が書いているのは日米安保条約成立から沖縄返還交渉前後の期間 である。 そこに書かれている内容は米国立公文書館(以下アーカイブと略す)で 公表された米国機密文書の内容と日本政府の答弁の食い違いを比較した 記録集である。 だからこそ迫力がある。 驚くべきは、この国の官僚はもとより、歴代首相そして司法(最高裁長官)、 学者(東大法学部長)などがことごとく米国に屈して国民を欺いてきたという 事実だ。 対米自立を訴えて米国から失脚させられたといわれる田中角栄や、その下 で外相を務めた良識派と言われた大平正芳でさえ、嘘を重ねて国民を騙して きたという事実だ。 この事の意味は深刻である。 これを要するに、戦後の日本は総がかりで対米従属に走り、国民をないが しろにしてきたということだ。 おそらくこれから何十年か先に公開される米国機密文書によって、いま進行 している日米関係も嘘だらけであることがわかるだろう。 その一端はすでにウィキリークスによって告発された米国機密公電で我々は 知っている。 問題は、このような密約の実態を暴く労作を行なう人材が共産党関係者しか いないという現実だ。 日米関係の嘘を騒ぎ立てる者は、たとえ共産党関係者でなくても共産党シンパ と見なされて異端視されることだ。 しかし日本の主権を放棄し、日本国民の生命と安全よりも米国の軍事政策を 優先し、それを国民に隠し続けることが正しいわけがない。 その事を追及し、是正を求めることを共産党だけに押し付けて済ませていい 筈はない。 末浪氏はその著書でこう書いている。 「重要な密約は、米軍の駐留が日本防衛のためでなく、別の目的であることに 関わっている。米軍駐留が日本防衛のためでないとすれば、国民はなんのために その犠牲や被害に耐えているのだろうか・・・」と。 これはすべての国民に共通する思いである。 愛国主義者、保守主義者こそ、その事を訴え、行動すべきなのではないか。 末浪氏はそのあとがきで次のように書いている。 (この書のもとになった機密文書の所蔵されている)アーカイブⅡは、広大な 敷地を持つメリーランド大学北側の雑木林にある。交通の便利なところではない。 ワシントンDCの7番街にある本館からは1時間ごとに無料シャトルが出ており、 私も長い間、お世話になった・・・路線バスと地下鉄を乗り継いでワシントンDC にあるアーカイブ本部まで出て、そこから片道1時間ほどかかるのはかなりきつ い。アメリカで切り詰めた自炊生活はきびしく、たずねてきた妻と娘はすっかり 痩せてしまった私を見てひどく心配した・・・」 その末浪氏は2012年に至る7年間の歳月をかけて調べ上げ、この書を 世に出した。 私はその労作のおかげで、今またあたらしい日米関係の密約を知ることに なった。 我々は日米関係の嘘を見つける努力を共産党だけに甘えていてはいけない。 日米関係の嘘を追及する事は共産党のやることだと一蹴して終わらせてはいけ ない。 日本は対米自立しなければ未来はないということを国民がひろく自覚するよう にしなければいけない。 その自覚を促し、国民の支持の下に対米外交を進めるような政治家があらわれ、 首相になって対米交渉ができる、そのような国にならなければいけない。 嘘を重ねてオスプレイを沖縄に導入しようとした矢先に、そのオスプレイが 米国で墜落した。 これを偶然で済ませてはいけない。 天の啓示ととらえるべきだ。 自民、民主、公明の大連立が実現しようとしている。 それに待ったをかけないとこの国は危うい。 消費税増税阻止、脱原発と並んで平和な沖縄の実現を対立軸にする政党の 大連立ができなければいけない。 最後のチャンスかもしれない。 そう日隅一雄さんが教えてくれていると思っている。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください。 ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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天木直人(元外交官・作家)