□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2012年3月16日第214号 ■ ========================================================= 派遣法改正をめぐる対照的な二つの考え方 ======================================================== 労働者派遣法の改正案が先般衆議院本会議で可決された。 小泉政権下で成立した労働者派遣法は、派遣員という不安定、 かつ弱い立場の労働者を大量に作り出し、正社員との間での格差 が生じた。 これを是正するはずの派遣法改正案が、大きく後退した形で 成立した。 この民主党の派遣法改正案について、正反対の評価が3月16日 の新聞に掲載されていた。 すなわち3月16日の日経「大機小機」は「誰のための派遣法 改正か」と題して要旨次のように書いている。 派遣社員を減らせば、その分だけ正社員の雇用が増えるという 前提は間違っている。企業へのアンケートによると、派遣が禁止 されれば別の非正規社員や正社員の残業などで代替するという答え が大部分だ。派遣労働者の仕事を奪ってしまうことになる。それに 臨時的、パート的な雇用を望む者も多い。派遣法改正は派遣労働者 にとっての真の利益の実現という立場に立って考えられるべきで、 「正社員が派遣社員に代替される事の防止」という思想のみで論じ られるべきではない。 これと対照的なのが3月16日の朝日新聞「経済気象台」の 「非正規雇用問題に思う」と題する要旨次の論説である。 雇用形態の弾力化については、正規雇用だけよりも多様な雇用 形態があるほうが国民経済的にも望ましい、との意見がある。この 論理は雇う側と雇われる側が対等の立場にあれば、一定の根拠を持つ。 しかし、現実には、雇われる側の立場が弱いという事情がある。 規制緩和するのは、雇用面ではなく、統制経済となっている農業 や医療、介護分野ではないか。この分野の雇用吸収力を高めるほか、 法定労働時間を短縮して、ワークシェアリングにより正規雇用を増や すような経済の舵取りが望まれる。雇用の安定こそ社会安定の基で あることを忘れてはならない。 雇用問題は簡単には論じられるものではない。 経済状況によって雇用状況もニーズも変わる。 この二つの、一見して対照的に見える論考も、労働者の権利を守る という意味では共通しているのかもしれない。 どちらが正しいというつもりもない。 しかし、少なくとも今の経済状況においては後者の考え方が求め られている、そう私は思う。 そういう政治が求められていると思う。 了 ─────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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