□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年11月26日第830号 ■ ============================================================= 「米国のアジア進出がアセアンに歓迎された」という大ウソ ============================================================ ホノルルで開かれたAPEC首脳会議とその後の一連のアジア首脳 会議をめぐるわが国の報道は、米国のアジア進出を歓迎する論調一色 だった。 それはTPPという米国主導の経済自由化を歓迎するだけではない。 それと並んで中国のアジアにおける軍事覇権を米国が牽制する。これ を日本やアセアンが歓迎するという報道ばかりだった。 すなわち、アジアという舞台をめぐって米中の経済的、軍事的駆け 引きが一連のアジア首脳会談のテーマであり、米国のアジア進出は歓迎 されるべきだと日本の報道は書きたてた。 それがいかに実態からかけ離れたウソだったかを見事に証明する記事 を見つけた。 11月26日の読売新聞は次のように書いていた。 すなわちインドネシアのバリ島で11月19日に開かれた東アジア 首脳会議の議長声明が25日になってようやくまとまって公表されたと。 発表が遅れた理由は首脳会議の焦点となった南シナ海問題についての 書き方で米国・日本と中国が対立し、アセアン諸国は板ばさみとなり、 結局は「南シナ海」という言葉は盛り込まれず、米国が主張する「海洋 安全保障」という言葉も「海洋協力」という曖昧な言葉に変更されて まとまったという。 つまりアセアン諸国は米国や日本の主張を受け入れるよりも、中国 との対立を好まなかったという事だ。 こんな重要な事を読売新聞しか報じていない。 もっとも、米国のゴリ押しに迷惑していたのはアセアンだけではない。 11月19日の日経新聞は、オーストラリアのダーウィンに米国が 海兵隊を駐留させたことについて、「米中の対立激化 豪を翻弄」と題 する次のような英国ファイナンシャル・タイムズの記事(11月18日 付)を紹介していた。 すなわち豪州は、中国の潜在的な経済力に気がついた最初の国の一つ であり「どの国も今の豪州ほど中国と緊密にはなれないが、豪州は もっと緊密になれる」(レイビー元駐中国大使)国であったのだが、 米海兵隊のダーウィン駐留は豪州を苦境に立たせるだろう、と書いて いたのだ。 そしてこのファイナンシャル・タイムズ紙の記事を裏付けるように 11月21日の読売は次のように報じていた。 すなわち、豪州のギラード首相は11月19日、バリで中国の温家宝 首相と会談した際、米海兵隊の豪州駐留についての中国の懸念払拭に 終始し、スミス豪国防相は20日豪テレビ局の取材に対し、「米豪軍事 同盟と中国との包括的な2国関係に矛盾はない」と弁明につとめたと 言う。 さらにまた11月21日の毎日新聞はアセアンの中心的国である インドネシアのマルティ外相が「(海兵隊の豪州駐留決定は)中国の 反発を招き、緊張や相互不信の悪循環を生み出す」と批判し、ユドヨノ 大統領側近は「米中の争いに巻き込まれればアセアンは分裂し共同体 構想も難しくなる」と警鐘を鳴らしたと報じている。 要するに米国のアジア進出はアジアの安全保障に役立つどころかアジア を分断するハタ迷惑な話なのだ。 それを歓迎するのは「日米同盟はアジアの公共財」などという馬鹿な ことを繰り返す日本と、シンガポールやフィリピンといった一部のアセ アンの対米傀儡国家だけなのだ。 日本の大手新聞を鵜呑みにしていると、とんでもない誤りをおかす ことになる。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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