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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

「ファイナル クラッシュ」という本と「もうひとつの日本」
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年11月11日第792号 ■     =============================================================      「ファイナル クラッシュ」という本と「もうひとつの日本」                                              =============================================================  本屋には経済危機に警鐘を鳴らすものがあふれかえっている。  それだけ日本や世界の経済情勢が悪いということだ。皆が将来に不安 を抱いているということだ。  玉石混合のそのような本のなかで一冊の本が私の目に留まった。  それは「ファイナル クラッシュ」(朝日新聞出版)という本だ。  その内容は、どの危機本より衝撃的だ。その題名の通り近いうちに 世界の経済が破綻するという。それもかつて人類が経験したことのない 大破局が来ると断言している。  そしてその著者の事を知ってさらに驚く。  日本の金融界を牛耳るどのような官民の要人さえも、仲間に入れても らえない金融クラブが世界には存在するという。  その大富豪たちの資金を一手に運用してきたというユダヤ人のファンド マネージャーが著者である。  そのファンドマネージャーが2007年春に自費出版した本が世界の 金融関係者のほんの一部に配られ、しかもその金融関係者の間で大評判に なったという。それでも増刷されることのない本であるという。  もちろん日本人でこの原書を手にしたものはいないという。  なぜ評判になったかといえば、その本が2007年に書かれたもので あるにもかかわらず、その後に起きたリーマンショックから始まって、 今日の欧米の金融危機を見事に言い当てていたからだ。  私がその本今や金融資本主義を全面的に否定し、金儲け主義のこれまで の考え方から決別し、「もうひとつの生き方」を今からすぐにはじめよと 警告していることである。  これこそがまさしく私が「もうひとつの日本」で実現しようとしている 共生の地方コミュニティー実現の考え方の根底にある考え方である。  しかし、私が最も驚いたのは、この本のそのような内容ではない。  この原書を入手し、翻訳し、そして日本に紹介しようとした一人の日本人 の名前に私の眼はくぎ付けになった。  ここからが今日のメルマガのテーマである。  その人物は石角完爾という。架空の人物ではない。現在は千代田国際経営 法律事務所の所長をしているれっきとした国際弁護士である。  2007年にユダヤ教に改宗しユダヤ人となり文字通りユダヤ金融資本 主義の仲間入りをした人物だ。  だからこそ彼はファイナル クラッシュの原書を手に入れ、その著者と 会って訳本を日本に紹介する了解を取り付けることができたという。  そして彼は著者の言葉を借りてこう書いている。  米国金融資本主義の中で生きてきた者たちはそれを信じないだろう、と。 いや、考えたくもないだろう、と。 いいだろう。大破局を信じるも信じないも読者の自由だ。しかし、現在 活躍している学者や経済学者、政治家、官僚、コメンテーターなどはいずれ も解決策を見出すことはできない。彼らは自らの過ちと不能を知り、穴の中 に顔を突っ込み二度と出てこないだろう。革命的な考え方のみがその解決策 を見いだす、と。  そういった上で訳者の石角氏は、ブータンを例にあげてこれからは意識 改革をし、「幸福」の意味を再定義すべきだ。そういう生き方をめざすべき だ。それこそが間違いなくやってくる「ファイナル・クラッシュ」を生き 延びる唯一の方法であると結論づけている。  実はこの石角完爾氏こそ私の高校、大学の同級生であり、ともに京都大学 を目指して机を並べて仲の良い二人だった。  ところが1966年の3月の合格発表の日から二人の関係は一変する。  彼はいやがる私を強引に誘って合格発表を一緒に見に行く事に固執した。 よほど自信があったのだろう。しかし結果は私が合格し、彼が落ちた。  その時から二人の関係は疎遠になり、一年遅れて京大法学部に無事合格 した彼はその日から国家公務員試験と司法試験の二つに合格すると宣言して それを見事に果たす。  通産官僚になったのはあくまでも官僚の履歴を身につけるための手段で あり、間もなく官僚をやめ国際司法弁護士となって金儲けに邁進した。  そんな彼と三十数年ぶりに再会したのは、私が外務省を首になった直後に 外国人記者クラブで講演をした時だった。 講演が終了した直後に私の目の前にあらわれた彼は、「そんなつまらない 話をしているよりも金儲けすることを考えたほうがいいぞ」。  ニヤリと笑ってその言葉を残して去って行った。  そんな彼と私が最後にたどりついた共通点は、皮肉にも金融資本主義の 破たんの後の「もうひとつの生き方」であった。  もっとも彼と私との違いはある。  彼は、クラッシュがこないうちに金を持って日本を離れ、それぞれが個人 の幸福を求めよとすすめている。  私はベーシックインカムの考え方に基づいた共生のコミュニティーを つくろうとする。  最後まで交わることのない私と石角である。                        了                                                ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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