□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年10月31日第764号 ■ ============================================================= メディアが知らせなければ国民は気づかない ============================================================= 10月29日の朝日新聞に極めて興味深いインタビュー記事があった。 その記事の見出しは「記者が消えた街」というものである。 インタビューに答えているのはニューズウィーク誌記者やUSニューズ &ワールドリポート誌の編集者などを経験したスティーブン・ワイルド マンという元ジャーナリストである。 その要旨はこうだ。 米国ではリーマン・ショック以降経営不振で地方紙が続々休刊に追い 込まれた。米国にはもともと、全州に記者を常駐させてくまなくカバー する全国紙はない。地元案件はもっぱら地元紙が取材報道してきた。 ところが頼みのローカル紙が休刊し、残った新聞も記者が減らされた結果、 記者が消えて、「取材空白」の街があちこちに現れるようになった。 その結果、地方政治に不正が放置されるようになった。 こう述べた後、ワイルドマン氏は次のような事例を紹介している。 カリフォルニアの小都市では市長が自分の給与を勝手に引き上げて オバマ大統領の2倍(年間6400万円)にしてしまった。驚いたこと にこれを市議会が承認している。その理由は、市議や警察署長の給与も 引き上げたからだ。市長選や市議選を取材する記者はいなくなり、議会 を傍聴する記者もいないため、住民は不正にきづかないままだ。 それだけではない。地方政治の実績がまったく報道されないので自治体 選挙の関心が薄れ、投票率がさがり、現職が常に勝つようになった、と。 法廷取材は絶滅し、裁判官の遅刻や暴言が見逃され、裁判の監視すら 出来なくなった、と。 驚くべき事態が米国の地方都市で進んでいる。 このインタビューを取材した山中季広ニューヨーク支局長もさすがに 驚いて「取材を終えて」の欄でこう書いてる。 「『取材空白』の深刻さは、新聞社で働いていながら、一度も思い至 らなかった」、と。 さてここからが、このメルマガで私が言いたいことである。 米国にくらべ日本のメディアは恵まれている。恵まれているからこそ、 取材が甘くなり、権力監視が弱くなる。 毎日新聞がスクープした。 外務省が将来の職員増加を見越して不必要に大きな大使館を70億円 もかけて中国につくった。ところが、中国政府の規則に違反していたこと が建てた後で中国政府に見つかって、完成した今も移転できずに放置され て数ヶ月たっている、と。 TBSの「みのもんたの朝ズバッツ」が早朝に報じ、10月29日の 毎日新聞小さく報じた。 ところが、その後これを報じるメディアは皆無だ。 公務員宿舎増築でさえ通らないこのご時勢で、70億円も使って不必要 に大きな大使館を立て、しかも規則違反が見つかって使われずに放置され ている。 こんな税金の無駄遣いが行なわれていたのだ。これは大スキャンダルだ。 しかしメディアは、他社のスクープを後負い報道するのはしゃらくさい のか、外務省に気兼ねしているのか、一切報じない。 報じなければ国民は気づかない。スキャンダルにならない。 了 ──────────────────────────────── 購読・配信・課金などのお問合せやトラブルは、 メルマガ配信会社フーミー info@foomii.com までご連絡ください ──────────────────────────────── 編集・発行:天木直人 ウェブサイト:http://www.amakiblog.com/ 登録/配信中止はこちら:https://foomii.com/mypage/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)