□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年7月8日発行 第491号 ■ ============================================================== 長く暑い夏になる予感 ============================================================== 久し振りに国会審議を終日熱心に聴いた。もちろん原発政策に関する やり取りを聴くためだ。 それを聴いて私は大いなる懸念を抱かざるを得なかった。 この国の原発はやがてすべて止まることになるだろう。 しかし、私はそれを手放しで喜べない。 脱原発政策の末の正しいありかたで止まるわけではないからだ。 私の言う正しい脱原発とは、こういうことだ。 日本を原発に頼らない国にすることを宣言し、そのために一方に おいて再生エネルギー拡大の政策を進めるとともに、他方で原発の段階 的廃止のロードマップをつくる。そうする事によって電力の需給バラン スに不必要な混乱を招く事なく脱原発を確実に実現する。 同時に、その前の喫緊の課題として、これ以上国民に放射線被曝を させないためのあらゆる施策を講じる。 これである。 ところが7日の国会審美を聴いていると、このいずれについても菅 首相は何も語らなかった。彼が終始語ったのは言い訳と開き直りだった。 もはや原発の安全性を確認しないまま原発を再稼動することはでき ない。 やらせのメールに対する反発がここまで騒がれるのも、ごまかしは 許さないという共通の認識が皆にあるからだ。 その一方で、国民生活や経済活動に不必要な混乱を招かないためには 安全が確認されたものから順番に原発を再稼動する。 これが民主党政権の現実的な原発政策だった。そしてそれを菅首相も 納得済みだった。 ところが支持者の市民派グループや社民党からの批判が菅首相に向け られた。彼らの支持を失えばさすがの菅首相も首相を続ける事が出来 ない。 そこで菅首相は、安全性のハードルをあげたのだ。 誰の入れ知恵か走らないがストレステストなどという基準を持ち出し た。 ところがそれを持ち出すのならもっと早くそれを持ち出して用意周到 な準備が必要だった。 そのような準備を何もすることなくどんどんと安全基準を高くして いった。 このままでは、どこまでであれば安全か、ということにつき結論が出 ないだろう。 「安全性」は水戸黄門の印籠だ。しかしそれゆえにそれを軽々に出し ては安易な妥協はできなくなる。 そしてそれが起きてしまった。もはやいつまでたっても原発は再開でき なくなる。 経済界に当惑が拡がり国民生活にしわ寄せが行く。 それは菅首相を除く民主党執行部の考えではない。 その証拠に、海江田経済産業大臣や細野原発担当相に玄海原発の停止を 迫る社民党の福島代表に対し、海江田大臣はもとより細野大臣までも一線 を画していた。 もちろんそれは保守的野党の立場でもない。 その一方で福島代表は菅首相の責任を問う姿勢はない。 いまや菅首相はこの国の保守派、中道派のすべて敵に回し、あたかも 市民派や社民党を唯一のたよりに脱原発を進めていこうとしているかの ようだ。 しかしそのような形では脱原発は進められない。国民の広い支持は得られ ない。 それはあたかも護憲ばかりを唱え、安全保障政策を語らない左翼政党が、 いつまでたっても日米同盟をやめさせる事が出来ないのと同じだ。 今後は原発問題が菅おろしの最大のイシューとなって政局の中心となって いくだろう。 その陰で再生エネルギー法案の議論や、脱原発のロードマップの議論など は吹き飛んでしまう。 もちろん放射能被曝問題や震災復興の問題さえも菅政権の下では進まない。 政治が行き詰まる形で、決して野垂れ死にをしないと決めている菅首相は 原発解散に突っ走らざるを得ない。 長く暑い不毛の夏になりそうな予感がする。 今度ばかりはその予感が外れて欲しい。 了

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