□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年6月4日発行 第387号 ■ =============================================================== リチャード・ギアと山本太郎に思う =============================================================== 6月4日の産経新聞がチベット問題で米国の俳優リチャード・ギア が議会証言をしたという記事を掲載していた。 それを書いたのは中国たたきの古森義久記者だから、その記事は リチャード・ギアが「胡錦涛国家主席はチベット自治区の党委員会だ ったときからチベット民族に敵意を抱いていることを指摘したい」、 とか「中国は弱い態度を見せる側にはさらにつけこんでくる」などと 述べたことを引用し、そのような中国やその中国に対して人権問題で 甘い態度を見せるオバマ政権批判について、民主・共和両党の議員が ギア発言に同調した、などと書いている。 私がここで言いたいのはチベット問題ではない。 著名な俳優が堂々と権力批判を行なうという米国の政治文化である。 米国ではほかにもジョ-ジ・クルーニーとか多くの芸能界の大物が 政治発言や政治行動を行なっている。 おりしも日本では、山本太郎(36)という俳優が、子供に対する 被曝基準が甘すぎると政治行動に参加し、反原発発言をしたことによっ て番組を降ろされたという事件が起きた。 その山本太郎にインタビューしている記事が週刊フライデー6月17 日号に掲載されていた。 それを読むとこの国では、政治家以外の一般人が政治的発言・行動を することが如何に難しいかがわかる。 番組を降ろされたのはスポンサーからの圧力ではなく、制作現場が 自主的に決めたことや、所属事務所を辞めたのは自分のことで迷惑を かけたくなかったから自ら申し入れた、事務所は最後まで自分を守っ てくれた、円満退社だ、ということを山本はしきりに語っている。 それは事実だろう。 しかしたとえそうだったとしても、山本は番組を降ろされ、芸能 活動を休養せざるをえなかったのだ。 この国では一般人が権力批判をする事についての異端視がある。 実はそのことは米国でも同じなのだ。 自分が権力の犠牲になっている場合はともかく、自分に関係がないの に権力の犠牲になっている人々のために権力批判を行なう事は容易な事 ではない。自分にとって得なことは何もない。 それでもあえて権力批判するリチャード・ギアや山本太郎を、だから 私は評価するのだ。 それでもリチャード・ギアのように莫大な資産のある者はまだいい。 どんなことになっても生活に困らない。精神的強ささえあれば自分の 主義・主張を貫いて過ごせることができる。 しかし山本太郎はそこまでではないだろう。つぎの言葉がそれを物語 っている。 「後悔はありません。ただ、母には迷惑をかけたと思います。これまで 苦労をさせて、やっと落ち着いて、たべられるくらいの稼ぎができた時 に、それをひっくり返すようなことをしてしまって・・・」 それでも彼はそのインタビュー記事の中でこういっている。 「仕事がなくなったとしても生きていくことに変わりはありません。 それよりも、国から不条理な仕打ちをされた人々に、少しでも光が当た るように活動していきたい。これは東北だけではなく、日本全体の問題 だと思うのです」 素晴らしい言葉だ。 リチャード・ギアもいいけれど山本太郎はもっといい。 この山本太郎の言葉を紹介したいために私はこのメルマガを書いた。 了

新しいコメントを追加