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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

那須野ケ原から「もう一つの日本」を立ち上げる
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年6月1日発行 第378号 ■     ===============================================================   那須野ケ原から「もう一つの日本」を立ち上げる  ===============================================================  毎月はじめにはあらたな読者が加わることになるので、新規 購読者のために少し背景説明をさせていただく。 継続読者におかれてはしばし我慢してお読みいただきたい。 私は原発事故という未曾有の人災を前に、この国の政治がこぞって 無能な醜態をさらしている以上、被災民はみずから立ち上がるしか ないと緊急提言をメルマガで書いた。 その内容は末尾に貼り付けて置くのでご一読願いたい。 その緊急提言が5月18日、19日の二回に分けて日刊ゲンダイに 掲載された。 確かな反響があった。  そしてここからが今日のメルマガで読者に伝えたいことであるの だが、ついに私の提言に応えて行動を起こす人々が現れたのだ。  それもなんと私が住んでいる地元の那須の地からである。一週間 ほど前のことであった。  考えてみれば那須は行動を起こす最適の地である。自然、太陽、水、 、福島原発から100キロ圏で、みずからも放射能汚染と無関係では ない。  なによりも震災で心を痛められた天皇・皇后陛下の御用邸がある地 である。  そこから自然と共生する日本を蘇生させるのである。  その構想の内容とは、既にこの地で一部実用化している再生エネル ギーシステム(小型水力、太陽光、風力、バイオマス、地熱など)を、 この機会に総合的に開発し、那須野ケ原一帯の18万人の住民の生活 電力として供給するというプロジェクトである。  その第一弾として、福島原発事故の被災民100世帯のために那須野 ケ原の最適地にスマートハウスを建てて受け入れる。  そして被災民を那須の農業、酪農業に受け入れ、職を与え、那須野ケ 原住民とともに共生するというプロジェクトである。  そのための予算を政府から確保して8月末までにスタートさせる。 つまり政府の避難民受け入れ仮設住宅プロジェクトと競うのである。  そのモデルが成功すれば究極的には那須野ケ原をベーシックインカム の思想にもとづいた共生、福祉地域とすることを目指す。これには デンマークの協力を得て行なう。  いわゆるもう一つの日本の実現である。  すでに政府に頼る事なく企業と首長によるあらたな試みがあらわれ つつある。  これからも日を増してその動きが出てくるだろう。私が緊急提言で 唱えたことが各方面で始まりつつある。  しかしこれらの動きと那須野ケ原の動きの決定的な違いは、その主体 が名もない住民、市民であるということだ。  ビジネスが絡んでいないということだ。  住民が首相に対して国の予算と権限の一部を与えてくれと要求する。  現行の法体系が間に合わなければ、議員立法でそれを可能にする法律 を作ってくれと要求する。これを全国の国民の前で行なうのだ。  それは沖縄の住民を勇気づけることになるに違いない。沖縄住民が 直接米国と交渉する事を促すかもしれない。  あるいはその他の地方から、もはや政府に頼らなくてもいいから思う どおりにやらせてくれ、とう住民が現れてくるかもしれない。  この那須野ケ原住民の動きは、一週間以内にメディアが大きく報じる ところとなるが、それまではメルマガ読者限りにとどめておいていただ きたい。  私は相談を受けて裏方でプロデュースの手伝いをするが表には出ない ことしている。あくまでも主体は那須の地の住民である。  今度こそ地方から日本を変えられることができるかもしれない。 緊急提言! 我々の手で「もう一つの日本」をつくろう 1.国民を救えないこの国の支配者たち  大震災が起きて3ヶ月近くたった今も何一つ救済策が進んで いない。しかしこの国の支配者たちが救えないのは被災民だけ ではない。沖縄県民は見捨てられたままだ。一般国民もまた切り 捨てられてきた。  実はこの国は、今度の東日本大震災が起きる前に既に行き詰ま っていた。支配者たちの失政と無駄遣いで招いた膨大な財政赤字 に苦しみ、それを解決するという口実で導入された競争至上主義 の結果、格差社会が進み、若者や女性、高齢者、低所得者、身体 障害者などの弱い立場の国民が犠牲を強いられてきた。  今こそ国民は、被災地の住民や沖縄県民に自らを重ね合わせ、 ともに声を上げ、立ち上がる時である。自分たちの生活は自分たち で取り戻す、と。 2.原発事故とウィキリークスがあぶりだしたこの国の支配体制 の病理  今度の大震災で起きた原発事故は図らずもこの国の支配者達の 権力犯罪を白日の下にさらした。権力にまかせて利権を山分けし、 その悪業を隠すために情報を操作、隠蔽し、反対する者を買収し、 歯向かう者をイジメ、弾圧する、警察、検察、司法までも歪める。  この卑劣な権力犯罪は原発政策に限らない。およそこの国のあら ゆる国策は、一般国民のためではなく、支配者たちのために、 支配者たちの手で作られ、そして支配者たちの巧みな宣伝によって、 正しいものとされて来た。  その背後には日本を占領し、日本を利用し続けてきた米国の存在 が常にある。それをウィキリークスが告発した米外交公電が見事に 示してくれた。この国の官僚とそれに操られた政治家たちは国民より も米国の利益を優先させてきたのだ。  この支配構造を変えることは至難の業だと我々はあきらめてきた。 政権交代にかすかな期待を抱いていた国民は、政権交代が起きても 何も変わらなかったことで絶望的になった。  しかし今度の大震災と原発危機は政府、官僚を追い込んだ。彼らで は国民が救えないことが明らかになった。一般国民がそれに気づいた。 国民はもはや自らの手で日本を立て直すしかない。 3.行動を起こす事とは、「もう一つの日本をつくる」事である  もう議論は十分だ。権力批判を繰り返しての効果はない。「行動を 起こす」のだ。私の言う「行動を起こす」ということは、この国の 支配者たちが独占してきた権限と予算を、我々にもその一部をよこせ と要求し、それを使って問題を解決する事である。  たとえ一部といえども権力者が予算と権限を一般国民の分け与える などということは平時ではありえない。しかし今は大震災という 未曾有の異常事態だ。おまけに原発事故という人災が被災民を塗炭の 苦しみに追い込んでいる。  沖縄は独立するしかないと菅首相自身がかつて呟いた。 そうであるならば、当然の要求として彼らにはそれを要求する権利 がある。支配者たちはその要求を拒むことはできない。  被災者が自分たちの手で行なう救済、復興計画が、この国の支配者 たちが行なう救済、復興計画よりも迅速で効果的であるのなら、国民 は気づく。もはや政府も国会議員も霞ヶ関の官僚も要らない、と。  そして被災地の人々に続けとばかり、全国の地方自治体が住民に突き 上げられて同様の動きを見せるだろう。これがきっかけとなって 「もう一つの日本」が次々とはじまるに違いない。 4.キーワードは脱原発、共生社会、世界都市である  原発事故の被害にあった住民が真っ先に進めるべきは脱原発エネル ギーの町づくりである。生活に必要な電力需要をコミュニティーで安く、 安全に確保して住民に供給できる町にする。  「脱原発エネルギーの町づくり」が成功すれば、その後の可能性は 無限に広がる。「もう一つの日本」のコンセプトは、この国の支配体制 が当然視してきた効率優先の競争社会、地位や名誉や待遇にこだわる 生活、そういう既存の価値観に押しつぶされない人生もまた主権を 持つ社会である。  それは決して既存の価値観を否定するものではない。既存の生き方に 価値を見出し、競争社会に勝ち抜いて行くことの出来る者たちはそう いう生き方をすればいい。しかし、それが出来ない、したくない者 たちの生き方もまた、等しく認められる社会をつくることである。  その根底にあるのはベーシックインカム制度(無条件の所得保障 制度)の思想である。支配者たちがつくった年金制度や社会保障制度は 既に破綻している。その解決策を彼らは見つけられない。それにかわ ってベーシックインカム制度を導入してみるのだ。面倒な手続きや 審査をなくし、すべての住民が当然の権利として最低収入を手にする 事ができる。最低限の生活が保障されれば、さらなる収入を求めて 仕事を探す余裕ができる。これである。  職については地方議会や地方公務員の職を住民の全員に開放すると いう考え方を導入する。つまりその地方政治の職を地方政治家や地方 公務員に独占させるのではなく、ローテーションを組んで住民が分かち 合い、その収入も分かち合うという考えである。  これこそが地方議会改革、地方公務員制度改革の究極の姿である。  生活の基盤である農業・酪農と漁業をコミュニティー全体で立て直 し住民がその職と食糧を分かち合う。非常時だから国民は国産の食糧を 優先して買うようにする、すなわちバイ・ジャパニーズである。これ は自由貿易の例外として国際的にも認められる。内需拡大につながる。  今度の大震災は世界中の注目と同情を集めた。特に原発事故について は、脱原発を目指す気運が世界的に高まった。脱原発を唱える世界の 影響力のある人たちに向かって、日本の被災地から脱原発の町づくり をしますと宣言し、それに協力して欲しいと呼びかけるのだ。そうし て世界の一流企業の誘致を行なう。利害を超えて協力する優良企業は 必ず現れる。それを誘致することは雇用創出になり、なによりもその 地域を世界的に魅力的なものとする。 5.三本の矢が結束すればできる  住民(一本目の矢)が立ち上がり、その声を政府に届ける首長 (二本目の矢)を見つけるのだ。原発に反対して国家権力から排除され た佐藤栄佐久元福島県知事がいる。米タイム誌の「世界で最も影響力 のある100人」に選ばれた南相馬市の桜井勝延市長がいる。小沢一郎 が本物の革命者なら、いまこそ国会議員を捨てて岩手の一首長(一兵卒) として中央政府に立ち向かう時だ。  有力な著名人や経済人の応援団が三本目の矢である。脱原発に目覚め たソフトバンクの孫正義社長、民主党政権に失望した稲盛和夫京セラ 創業者、「原発に頼らない安心できる社会へ」という考えを実践した 吉原毅城南信用金庫理事長などが「もう一つの日本」つくりに合流す れば鬼に金棒だ。大きなうねりとなって拡がっていく。 6.エジプト市民にできて我々に出来ないことはない 今度の災害をきっかけに様々な復興計画が進んでいくに違いない。 その復興計画は、根本的な変革を含むものになるかもしれない。 しかしそれを既存の支配者たちの手に独占させてはならない。それを 許せば、結局、何も変わらなくなる。支配体制が温存され、不公平、 不平等が固定化していく。  日本の変革は、これまで権力の外に置かれてきた者たちの手で成し 遂げなければならないのだ。  それはあたかもエジプトで起きた市民革命と同じだ。あの時エジプト の市民は、「一人一人がこころから国を変えたいと思った。ここにいる 皆がヒーローだ」と語った。  エジプト市民が成し遂げたことを我々ができないはずはない。                             了  

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